新年明けましておめでとうございます。
さて、世の中でここ数年話題になっているコンピューターの2000年問題も、あと1年に迫った。既に対応を実施、あるいは完了している企業の方々は、何を今さら、そもそも今ごろこのようなことを言っていたのでは遅いではないかと思われるかもしれない。確かに大企業では、今からコンピューターの2000年問題に対応していたのでは間に合わない。大企業は既に十分な対応を行っていると期待したい。しかし、多くの中小企業や、個人で事業を営んでいる方々のなかには、まだこの問題に対応していない人も多いのではないかと思う。事実、色々な調査でも、そのような結果が出ている。そこで、大企業の方々には、最終確認のため、また、まだ対処出来ていない方々には、もう一度この問題の重要性を確認する意味で、この問題を取り上げたい。
ほとんどの方は、コンピューターの2000年問題がどんなものであるか、もうご存じと思うが、これはコンピューターのソフトウェアおよびハードウェアが、西暦の下二桁だけを使って処理している場合、2000年が1900年と間違われ、コンピューターに混乱を生じるものである。当初注目されていたのは、大型メーンフレーム・コンピューター上で動くソフトウェア、なかでもCOBOL言語で書かれたものについての問題を中心に指摘されていたが、その後、パソコンなどでも問題があることがわかり、さらには、一般にコンピューターとは呼ばれない、プログラマブル・コントローラーや、半導体チップでロジックの入っているものにも同様の2000年問題があることが判明し、その影響は当初考えられていたものより、はるかに幅広いものとなっている。
したがって、大企業では既に1995年、場合によってはそれ以前から2000年問題への対応作業を実施しているが、やればやるほど作業量が多くなってきているというのが、現状である。米国のある銀行では、この2000年問題対応のため、2億5千万ドル(約300億円弱)を使おうとしている。このような、すでに2000年問題対応をかなり以前から進めている企業に対するチェックポイントとしては、以下のようなものがあげられる。
(1) 大型コンピューターだけではなく、パソコンを含めたすべてのコンピューター、さらにはネットワーク機器、プログラマブル・コントローラーや半導体チップなどについて2000年問題を確認しているか
(2) 自社の2000年問題だけではなく、自社のビジネス遂行に必須の取引先、たとえば部品メーカーなどが2000問題にきちっと対応し、2000年1月1日に混乱が外部からの影響で起きないよう確認しているか
(3) 万一システムの2000年問題対応に不備があり、システムが稼働しなかった場合に、ビジネスを継続するためのコンティンジェンシー・プランは出来ているか。また、同様のプランは、取引先、さらには電気、ガス、水道、電話などが万一混乱した場合に対しても準備されているか
最後の電気、ガス、水道、電話などに混乱が生じることは、可能性としてはかなり低いと思われるが、例えば、電力会社の発電所のシステムで、プログラマブル・コントローラーに2000年問題があり、対応しなければ発電所のシステムに問題が生じるとの報告もあるので、全くありえない話ではなく、最低限の準備はしておくにこしたことはない。
中小企業においては、まだまだ2000年問題対応が十分とはいえない状況である。米国では、ある銀行が1998年はじめに実施した500万社調査によると、約半数の企業が2000年対応を考えていないという結果が出ている。日本では、(財)全国中小企業情報化促進センターが、1998年9月に全国1万社を対象に行った調査結果が出ており、そこでは、2000年問題に対応済みと対応中の企業が、回答を寄せた企業中約2/3と、まずまずの結果であるが、回答を寄せた企業は約2千社であり、回答しなかった約8千の企業が同様の比率で本当に準備しているか疑問が残る。準備が何も出来ていないので、回答しなかったという企業もかなりあるのではないかと想像される。
中小企業といっても、大小さまざまであるので、一概には言えないが、比較的小規模なビジネスであれば、もしまだ2000年問題対応ができていなくても、今すぐに対応を始めれば、間に合う可能性は十分にある。理想的には、前出の大企業がやるべきことと基本的に同じことをすべきであるが、時間的に、また予算的に難しい場合は、とりあえず自社のシステムの、なかでもキーとなるシステムについてのみ、まず対応をはかるようにすべきである。
具体的には、以下のような対応をすべきである。
(1) キーとなるコンピューター・ハードウェアの2000年対応の確認と、必要なら修正作業とテスト
(2) キーとなるオペレーティング・システムの2000年対応の確認と、必要なら修正作業とテスト(Windows95は修正が必要であり、Windows98についても、小さな問題であるが、対応が必要である)
(3) キーとなるソフトウェア(購入したもの、自社開発したもの、他社に依頼して開発したもの)の2000年対応の確認と、必要なら修正作業とテスト
メーカーへの問い合わせは、インターネットでその会社のホームページを見るのが最も手っ取り早い方法である。主なメーカーは、ほとんど2000年問題がその会社のどの製品にあるか、それに対してどのように対処すべきか、また、必要となる修正ソフトウェア等を用意してくれているので、素早く対処できる。自社開発したものや、他社に依頼して開発したものについては、一つずつ確認していく必要がある。
2000年問題は2000年の1月1日にだけ起こるものではない。実際、それ以前でも、支払日、有効期限などのように、将来の日付が関係している場合、それよりもずっと以前に起こるし、既にこのような問題を経験している企業も多いであろう。逆に、2000年の1月1日を過ぎても、それ以後に始めて動くプログラム、たとえば、週の特定の曜日、月末、また期末などに動くものは、その日になってみないと、大丈夫かどうかわからない。要注意である。
さらに、最近言われ出したもう一つの2000年問題も要注意である。これは、2000年が閏年であるということである。通常、閏年は4で割り切れる年数にやってくる。しかし、100で割り切れる年数のときは例外で、その年は閏年にならない、というルールがある。ここまでは結構知られていることであるが、さらに、400で割り切れる年数のときは閏年になるという、例外に対する例外があるのを知らない人は以外と多い。したがって、現在動いているプログラムで、2000年は閏年ではないと考えているものも多いことになる。2000年問題の確認、修正、テストの作業を行う時には、こちらについても、一緒に行うようにしたい。
最後に、個人でパソコンを使っているという人達にも2000年問題は無関係ではない。極端な場合、2000年対応していないプログラム(特にディスク上のファイルを掃除するようなもの)がディスクの内容を消してしまうようなことも、ありえないことではないので、事前に必要なファイルのバックアップをとったり、時間に余裕があれば、上に書いた中小企業向けの助言に従い、対応作業をすべきである。そして、万が一の可能性を考え、“もしかしたら2000年の1月1日に大きな地震があるかもしれない”というふうに考え、世の中に多少の混乱が起きても大丈夫なように備えておくことも有効ではないだろうか。
(1/1/99)
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