例年1月は前年度の決算報告が出されるため、気が付いてみると、ここ数年2月になると、インターネット関連企業の状況について書いている。一昨年は「どうなるAmazon.com」、昨年は「e-コマースに明るい兆し」というタイトルのレポートであった。今年も同様にドットコム企業の状況を見てみたい。
ドットコム・バブルがはじけ、すでに2年以上がたった。以前にも書いたが、インターネット・バブルという言葉は私は使わない。インターネットによって、世の中が大きく変わったことに間違いはなく、したがって、インターネットそのものがバブルであるという言い方はふさわしくないからである。
インターネット・バブルではないが、インターネットの急成長に合わせて雨後の筍のようにたくさん出現し、その多くが消えていった、いわゆるドットコム企業は、バブルという言葉がふさわしいであろう。しかし、その生き残り組は、次第次第に業績を伸ばしてきている。
一番成功しているのは、やはりオークション・サイトとして有名な、eBayである。eBayは、生き残り組というよりも、完全な勝ち組と言える。日本では、出遅れたため、Yahooにオークション・サイトで負けてしまったが、米国本社は(私の記憶に間違いがなければ)会社設立当初から黒字を出し、業績をどんどん伸ばしている。2002年も売上が12.1億ドルで、2001年より62%上昇し、純利益(Net Income)も2.5億ドルと前年より176%上昇している。
特にクリスマス等の年末商戦で大切な第4四半期に売上が前年より89%伸び、利益が3.3倍以上になったのが大きい。しかも昨年の年末商戦は米国の景気低迷のため、全般的には必ずしも好調ではなかったことを考えると大きい。
eBayの好調さは、単にオークション・サイトとしてビジネスを伸ばしてきただけでなく、新たなビジネス展開をしている点である。例えば、単にオークションを提供するだけではなく、最近はディスカウント商品にも手を広げており、これらはオークションという時間のかかるプロセスを経ずに安価な商品が手に入るので、この部分でもビジネスが広がっている。
インターネットの発展当初から有力なポータルといえば、Yahooである。Yahooはいち早くこの地位を確保し、インターネットを使っていてYahooを使わない人はいないくらいではないかと思う。無料のサービスとしてはじまったため、主に広告を収入源としていたが、ここ数年の不況と、インターネット広告の伸び悩みのため、折角黒字になっていたのが、2001年には赤字に転落し、リストラを行い、一時Yahooのビジネスモデルは成立しないのではないかとまで言われた。
しかし、新しい社長を迎え入れ、ビジネスのてこ入れを行った結果、2002年には見事に黒字を回復するにいたった。2001年に9,200万ドルの赤字だったのが、2002年には1億ドルを越える黒字を見事に回復した。売上高も2000年の11億ドルから2001年には7.2億ドルまで減少していたのが、9.5億ドルへと、33%上昇し、回復基調に入った。
Yahooの業績回復は単に景気がよくなって、インターネット広告が拡大したという話ではない。実際、景気は昨年も低迷を続けている。不振脱却の一因は、一般メディアに多くの広告を行う大手企業を積極的に勧誘したことにある。たとえば、コカコーラ、トヨタ、GMなどである。そして、彼らを勧誘するために、いままでのような単純なバナー広告などと違い、アニメーションやビデオなど、より人の目を引く広告を多用し始めたためでもある。これらの努力のおかげで、2002年には、AOLよりもYahooにより多くの広告収入があったと言われている。
また、別な要因としては、広告以外の収入の道を広げたという面もある。有料コンテンツやYahooショッピングでのセールスが上げられる。これら広告以外の収入が、2001年には売上全体の10%だったものが、2002年には、一挙に40%まで上がったことは、業績改善に大きく貢献している。有料サービスの利用者も2百万人におよぶというから、かなりである。それにYahoo利用者はその百倍(2億人)ほどもいるというから、この有料サービスが広がっていくと、Yahooの収入に大きく貢献することになる。
さて、2年前に「どうなるAmazon.com」と書いたAmazon.comはどうであろうか? このときのレポートを読み返してみると、2000年には売上高27.6億ドルに対し、14.1億ドルの大きな赤字を出し、社員の15%にあたる1,300人の人員削減を行ったとある。これが昨年のレポート「e-コマースに明るい兆し」では、第4四半期に営業利益1,500万ドルを出しただけではなく、純利益も500万ドル出し、四半期ながら初めて利益を出したと書いた。第4四半期はクリスマス等の年末商戦時期にあたり、小売企業はよい数字が出るのが当たり前なので、その後また赤字に転落することは、すでにわかっていた。しかし、四半期といえども利益を出せる会社になったというのは大きかった。
さて、そのAmazon.comの2002年は、ばら色とはいかないものの、2001年からさらに大きな改善が見られた。2002年のはじめに予想された通り、最初の3四半期は、純利益を出すことが出来ず、赤字に戻ってしまった。しかし、第4四半期には、2001年同様、純利益を出すことが出来た。売上も2002年全体で39.3億ドルと、前年を26%上回った。また、年間通しては、まだ赤字なものの、その額は2001年の5.7億ドルから1.5億ドルへと大きく改善した。リストラ費用等の一時費用を除いたPro Formaベースでは、ついに6,600万ドルの純利益を出すにいたった。営業損益だけでみると、これも6,400万ドルの営業利益(Pro Formaベースでは1.8億ドルの営業利益)となった。さらにキャッシュフォローで見ると、2001年に1.7億ドルの赤字だったのが、2002年には1.35億ドルの黒字に大きく改善している。
Amazon.comの業績改善は、継続したコスト削減に加え、海外部門のビジネスの伸びの貢献も大きい。2002年には海外の売上が4.6億ドルとなり、前年を76%上回った。また、米国内で実施した、25ドル以上の注文に対する送料無料サービスも、売上向上に大きく貢献したようだ。
このように、ドットコム生き残り組は、元気を取り戻しているが、今後を占う上で、さらに面白い調査報告がある。 これはカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)がインターネット・ユーザーに関して毎年実施している調査であるが、それによると、米国人でインターネットを使っている人は、インターネットを使う時間がテレビを見る時間を昨年ついに追い越したのである。インターネット利用時間は確実に上昇を続け、昨年は13%上昇して毎週11.2時間、これに対し、テレビを見ている時間は9%減少して11.1時間となったと述べている。この先この比率がどれくらい変化していくかはわからないが、インターネットがテレビと同様、またはそれ以上に一般消費者のものになったことははっきりしている。
多くのドットコム企業がつぶれ、市場が数少ない強者のみとなり、そして、それを後押しするように、インターネット・ユーザーはどんどんインターネットに深入りしてくる。こうなってくると、ドットコム生き残り組の将来は、かなり明るいものがある。株価は全般的にまだ低迷しているが、長期的視野に立てば、これら企業の株をそろそろ買ってもいいかもしれない。
(02/01/2003)
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