インターネットは新しい市場、新しい技術の宝庫である。電子メール、ファイル転送といったベーシックなものの利用から、WWWとブラウザーが登場し、インターネットの環境が一変してからまだ5年も経っていない。そして、対外的な利用が中心と思われたインターネットの技術を社内ネットワークとして利用しようというイントラネットの動きはわずか1年ちょっと前、そのイントラネットのことをこのコラムで私が書いたのはほぼ1年前の事である。
その後、このイントラネットの動きは特定外部(取引先や特定顧客)にそのネットワークを解放する“拡張イントラネット”(エキストラネットともいう)へと発展し、各企業はこれらのシステムの開発に邁進している。そして、ここへ来てさらなる新しい波として“プッシュ・システム”が登場してきた。プッシュ・システムとはその言葉が示す通り、情報をプッシュ(押す)するシステムである。これまでのWWWはすべてユーザーが情報を探しに行き、情報をプルする(引っぱってくる)ものであった。これに対し、プッシュ・システムはユーザーが情報を取りに行かなくても、情報がプッシュされてユーザーのもとに送られてくるものである。
具体的な例でいうと、もう1年近く前からサービスをしているPointCastというものがある。これは、ユーザーがあらかじめどんな情報に興味があるかを登録しておくと、その情報を自動的に定期的に送信してきてくれる。例えば、自分の興味のあるニュース、スポーツ、天気などの更新された最新情報を自動的に送ってきてくれる。特定の会社の情報や株価についての情報を送ってもらうことも出来る。このシステムではこの送られてきた情報を自分で操作して見ることも勿論可能だが、自分がコンピューターを使っていない時に自動的に表示する画面(一般にscreen saverという)として、勝手に表示させることも出来る。
何故1年前からあったこのようなシステムが新しい波として注目されはじめたのか。それは、このシステムが単にscreen saverとして面白いというだけではなく、幅広い用途に使えると人々が発見したからである。例えば、イントラネットの一部として社内情報の伝達に利用する、また、拡張イントラネット(エキストラネット)の一部として取引先や特定顧客に情報を伝達する、などがあげられる。
最近のインターネットはWWWホームページも数多くそろい、情報量も非常に充実してきた。しかし、その反面、膨大な情報の中から自分のほしい情報を探すのは一苦労になってきた。仮に、その情報がどこにあるかある程度わかっていたとしても、自分でパソコンを操作し、その目的の情報を得るには時間がかかるし、自分のやっていることを中断して、WWWに情報を取りにいかなくてはならない。これに対し、プッシュ・システムは自分で何もしなくても、ほしい情報が送られてくるので大変便利である。
これは一見、テレビをつけっぱなしにしているようなものであるが、大きな違いは、個人個人の嗜好、ニーズに合わせて情報が送られてくるという点である。幅広い視聴者に同じ情報を配信するテレビのようなブロード(幅広い)キャスト・システムではなく、個人個人それぞれのニーズに合わせたポイント(一点)キャスト・システムなのである。
また、このようなプッシュ・システムは単に画面情報だけでなく、ファイル、ソフトウェアまでも自動的に送り込むことができるものもある。これにより、ソフトウェアの更新なども自動的に出来る仕組みが作れるわけである。
このように、いままでインターネットのユーザー・インターフェースといえばブラウザーと相場が決まっていたものが、ここにプッシュ・システムというニューフェースが登場したわけである。この先このプッシュ・システムがどれだけ市場に広がっていくかは、今年1年を見てみないとはっきりしないが、私の見るところ、これはインターネットの新たな1ページを作る重要なものとなるという予感がする次第である。
(02/01/97)
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