ここ数年、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)とよばれる企業のバック・オフィス(経理、製造など)支援のためのソフトウェアが急速に伸びている。米国のみならず、日本でも、今まではこのようなシステムは皆、自前のソフトウェアを開発していたものが、これら既成のアプリケーションを使う(または、それをベースに利用し、一部カストマイズする)ようになりはじめてきている。実際、多くのシステム・インテグレーターがこの分野での仕事に追われている。
ただ、今回お話しようとしているのは、これらERPシステムのことではなく、これらをバック・オフィス支援ソフトウェアと考えると、これに対し、フロント・オフィス支援ソフトウェアという、顧客に直接対応する、または顧客と直接対応する営業マンやサポート・サービス担当者を支援するものである。フロント・オフィス支援という範疇に入るものとしては、セールス支援、顧客の問い合わせに答えるヘルプデスク、等といったシステムがあげられる。
これまで、これらのシステムは、それぞれ単独のアプリケーションとして発展してきたが、このようなシステムを導入してきた企業では、成功例ばかりでなく、うまくその利点をいかしきれず、失敗したものもかなりあるようである。そこで、最近出てきた動きは、これらの機能を統合化しようという動きである。顧客対応は単にセールスをするだけでは終らず、その後のサポート・サービス、そのためのヘルプデスクも重要であり、それらがうまくいけば、また次のセールスにつながるというわけである。したがって、これらを支援するシステムも統合化したほうが効果が出ると考えられ始めている。
そのため、それぞれの単独アプリケーション・ソフトウェアを開発、販売してきたメーカーは、お互いパートナーシップを組んだり、合併/買収などが起こりはじめている。また、バック・オフィス支援のERPソフトウェア・メーカーも、フロント・オフィス支援機能を加えたり、フロント・オフィス支援ソフトウェア・メーカーの買収を行ったところもある。そして、さらにこれらフロント・オフィス支援ソフトウェアが連係をとりはじめているのが、コールセンター・システムである。
インターネットの急速な広がりとその重要性については、ほとんど毎回のように触れているが、インターネットが大きく広がったといっても、電話の普及率には遠く及ばない。特に、個人での利用を考えると、米国でもパソコンの普及率がまだ全家庭の50%にいたっていない状況であるから、インターネットの利用率も、それよりさらに低いということになる。それに比べると、双方向コミュニケーションができる媒体としての電話の普及率は、ほとんど100%といってもいいであろう。
ビジネスにとってインターネットをいかに利用するかは、その企業の存亡にかかわる大きな問題であると言い続けてきたが、家庭を相手にするような場合、まだまだ電話をいかに有効利用するかというのも、ひとつの大きな課題である。また、日本では、インターネットも普及してきたとはいうものの、まだまだビジネス対ビジネスの取引でも、インターネットを前提としたものが、そのままどこででも受け入れられるというところまでは来ていないので、なおさらである。
そういう意味でも、ここ数年、コンピューターと電話の融合を表わす言葉、CTI(Computer Telephony Integration)が次第に広く使われ始めてきた。CTIのアプリケーションには色々あるが、一番広く普及しているのは、やはりコールセンター・アプリケーションである。
コールセンターでのCTI については、以前にも一度話したと記憶しているが、簡単に振り返ってみると、次のようなものが含まれる。まず、電話を受け付ける多数のオペレーターにそれぞれ均等に電話がかかるようにするオートメーテッド・コール・ディストリビューション(Automated Call Distribution - ACD)機能、また、頻繁にかかってくる同じ質問にオペレーターが出ず、コンピューターでそのまま答えてくれるインタラクティブ・ボイス・レスポンス(Interactive Voice Response - IVR)、最近日本でもはじまった電話の発信者番号を利用し、かかってきた電話番号をもとに、どこの会社の誰からかかってきたかをコンピューターの画面に電話をオペレーターがとるときに表示し、また単に相手の名前等を表示するだけでなく、既に色々な取引があるお客については、過去の取引情報や、既に質問されている内容、また、それに対する対応等、考えられるあらゆる情報を表示し、それらをベースに電話の対応が出来るもの、などが上げられる。
また、電話を受ける(Inbound Calling) 場合だけではなく、電話によるセールス(Telemarketing)のための電話をかける(Outbound Calling)場合にもCTI を利用して、テレマーケティングで電話をかける相手先をデータベースに入れておき、自動ダイヤルして相手につながったらオペレーターに接続するという使い方もある。
このようなコールセンター機能は何年も前からあったものだが、最近加わった機能としては、インターネットを連係させた機能があげられる。例えばインターネットで、ある会社の製品情報を見ていて、何か質問が生じたとき、これを電子メールで入れておいて、あとで返事を見るという方法もあるが、その場でオペレーターと話してすぐに返事をもらいたい場合もある。このような時、インターネット経由でコールバックの依頼を出すと、その場でコールセンターのオペレーターにつながり、オペレーターから逆に電話がかかってくるという仕組みである。そして、必要な情報もユーザーのブラウザーに送り、それを見ながら話しができれば、説明もぐっとわかり易くなるというものである。
今回はインターネットではなく、電話の話をしているつもりが、やはりインターネット関連の話になってしまったようである。あらゆる分野に大きな影響を及ぼしているインターネットであるから、やむを得ないことではあるが。インターネットが出てきたついでに言うと、コールセンターとのやりとりの電話もインターネット経由でやってしまおうというシステムもいくつかある。これは、個人の家庭のようにインターネット用と普通の電話を共用している場合、インターネットの画面をはなれずに電話のやりとりが出来るというメリットがあるが、所詮リアルタイムのパフォーマンスは保証されていないインターネットであるから、運が悪い(ネットワークが混んでいる)と電話の品質が悪くて使い物にならない可能性もある。
話が少しそれてしまったような気もするが、ERPについで出てきているフロント・オフィス支援ソフトウェアは、それぞれ単独のアプリケーションであったものから統合化に向い、バック・オフィス支援ソフトウェアとの連係、そしてCTI、コールセンターとの連係へと広がってきている。インターネットだけでなく、電話も含め、企業がそのオペレーション効率の向上にバック・オフィス、そしてフロント・オフィスと努力しており、今後、注目されるところである。
(03/01/98)
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