先月のレポートはイントラネットについての話をした。 昨年の秋頃から使われ始めたこの言葉はアッという間に米国、そして日本に広まり、米国では具体的に企業がイントラネットを次々と構築しはじめている。 イントラネットがきわめて大きな世の中の動きである事は事実である。
しかし、もう少し長い目で世の中の大きなうねりを見てみると、企業のコンピューター利用、情報通信利用は過去数十年社内の情報システム化にほとんどの力が費やされていたのが、ここへ来て企業と社外、特に企業と顧客とのリレーションの強化という方向に進みだした事が大きい。 つまり、これからは“インターナル”から“エクスターナル”へと移り変わっていくのである。 そういう意味からいうと、イントラネットはまだ社内の“インターナル”なシステム化の話であり、顧客とのリレーション強化には、直接的にはつながっていない。
そこで、今回は顧客とのリレーションの強化という面から、最近の米国の情報通信の利用状況をみてみたい。 まず、顧客とのリレーションへの情報システムの応用という時、大きなのもとしては次の3つがある。
顧客とのリレーションの強化をサポートするものとして、インターネットが大きな役割を果たしている点については、既に何回か書いているので、今回はインターネット以外のものとして注目すべきもの、コンピューター・テレフォニー・インテグレーション(Computer Telephony Integration -CTI)について少し話してみたい。
まず、CTI とは何か。 これまで、コンピューターと電話はそれぞれが別系統で使用され、互いに関連をつけて利用されていなかった。 それが、最近になって統合化され、相互に協力しあいながら使われるようになったのが CTI である。
具体的な例を示すのが最もわかり易いであろう。 1つの良い例として、コール・センター・アプリケーションが上げられる。 コール・センターとは数多くの電話オペレーターが並び、通信販売の受け付けをやったり、また顧客からの問い合わせに対する応答(通常ヘルプデスクと呼ぶ)を行うものである。
コールセンターでのCTI には、色々な機能がある。 まず、多数のオペレーターにそれぞれ均等に電話がかかるようにする機能がある。 オートメーテッド・コール・ディストリビューション(Automated Call Distribution - ACD) がそれである。 これにより、オペレーター間の不公平を解消する事が出来、電話をかけてきた人を不必要に待たせる事がなくなる。
また、既に米国の多くの地域で行われており、これから日本でもはじまる電話の発信者番号(英語ではCaller ID) 表示が可能になると、これを利用して色々と面白い事が可能となる。 まず、かかってきた電話の番号をもとに、どこの会社の誰からかかってきたかをコンピューターの画面に電話をオペレーターがとるときに表示する事が出来る。 単に相手の名前等を表示するだけでなく、既に色々な取引があるお客については、過去の取引情報や、既に質問されている内容、また、それに対する対応等、考えられるあらゆる情報を表示し、それらをベースに電話の対応が出来るわけである。
このような情報を画面に表示するために、いままでであれば、電話のオペレーターが電話の最初にアカウント番号等を聞き、それを入力する、また、顧客のアカウント番号等がわからない場合には、名前や電話番号などからこのような情報にようやくたどりつくという、顧客にとってもオペレーターにとっても面倒で時間のかかるものであった。 それが、電話がかかったと同時にコンピューター上のデータベースと連携して、情報がオペレーターに提供できる訳である。
これをさらに発展させると、電話がかかってきたときに、単に空いているオペレーターや、オペレーター間の公平さを保つために選ばれたオペレーターではなく、かけてきたお客に最適なオペレーター(例えば、前回の問い合わせに応対したオペレーターとか、その顧客担当のオペレーター等)にその電話を回す事も可能となる。
このような、コールセンターでのCTI 利用は以前からもあったが、今まではメーカーそれぞれの製品により、かなり高価なソリューションとなっていた。 それが、最近になって、パソコン・ベースのCTI の標準インターフェースが登場し、それほど大規模でなくても、比較的安価にこのコールセンター機能を用意出来るようになった事が大きい。
また、電話オペレーターの代わりにコンピューターのオペレーターで応答するというものもあり、サービスのメニューをコンピューターの合成音により応答し、それに顧客の側がプッシュホンの番号で答えるというものがあるが、これに最近は音声認識機能を加え、顧客がプッシュホンの番号を押すのではなく、声で返事するものも出てきている。
ここまでの話はすべて電話を受ける(Inbound Calling) 場合の話であるが、電話によるセールス(Telemarketing)のための電話をかける(Outbound Calling)場合にもCTI は利用出来る。 例えば、テレマーケティングで電話をかける相手先をデータベースに入れておき、自動ダイヤルして相手につながったらオペレーターに接続するという使い方もある。
最近のCTI での動きで注目されるのは、今までこのような機能が PBX に付随し、そのメーカーのクローズな世界のものだったのが、ソフトウフェアの標準化の動きとともにオープン化し、安価にできるようになったこと、そして、大きな PBX を使わなくても、パソコン・レベルでも可能となった事である。
CTI はまだまだ奥深いものがあり、今後またとりあげてみたいと思う。 インターネットとの関連でいうと、これはどちらか一方というものではなく、それぞれに長所、短所があり、今後とも共存していくものと考えられる。 実際、インターネットとCTI をうまく組み合わせたシステム等も既に考えられている。
インターネットだけではなく、今後はCTI も注目すべきものの一つとして記憶にとどめておく必要がある。
(4/01/96)
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