米国では勿論のこと、日本でも、そしておそらく世界中のあらゆるところで、インタ ーネット・ブームである。私が“インターネット・ワールド”(丸善ライブラリー )を出版してから、早や1年3ヵ月が経つが、書店のインターネット関連の本の数は いまや一時のマルチメディア・ブームの時に近ずいているようにも見える。
ブームになるとブームに乗って騒ぐ人、ブームをあおり立てる人など色々出てくる。 その反面、このブームはいつまで続くのだろうか、ブームが終わったら何が残るのだ ろうか、と冷静に状況を見ようとする人もいる。また、逆にインターネットの問題 点を大げさに強調して注目を浴びようとする人も出てくる。早い話、ある事がブー ムになると、現実が見にくくなるものである。
では、このインターネット・ブームはいつまで続くのか。私の結論を言うと(もう 以前のレポートをご覧の方はおわかりかと思うが)、インターネットは単なるブーム ではなく、もはや本流である。今やインターネット、そしてイントラネット(イン トラネットについては今年3月のレポートを参照されたい)は企業にとって、また個 人にとって、なくてはならないものとなっている。
たとえば、私は“インターネット・ワールド”の中でコンピューター業者は最初はイ ンターネットが使える(互換性がある)という事で製品の差別化が出来るが、すぐに インターネットが使える事は当り前になり、インターネットが使えないと逆にマイナ ス点となる逆の差別化要因になってくると述べた。それから1年も経たないうちに 、もうそのような状況になっている。
私はインターネットが騒がれ出した頃から、コンピューターや通信関連の業界紙のイ ンターネット記事を切り取ってファイルしていたが、もうこれは不可能となってしま った。と言うのも、今やこれらの業界紙に書かれている記事の半分くらいは、インタ ーネット関連であり、いくらファイル・キャビネットがあっても、とても足りなくな るからである。それに加えてインターネット専門の業界紙が多数ある訳である。
また、インターネットが話題になり始めたつい2−3年前頃(日本ではつい1年前く らい)には、企業がインターネット上にWWWホームページを持っているというだけで 話題になったり、先進的な企業のイメージがもたれたものだが、今は企業としてWWW ホームページを持つのは当り前、持っていないと“遅れている会社”の烙印を押され 、取引先から相手にされず、購買の購入先の候補からももれ、学生からも相手にされ ず、優秀な人材が採用出来ないという事になってしまう。WWWホームページが企業 イメージの1つの大きな要素となっている。
世の中には、WWWホームページを作ったが、投資の割に見返りがない(又は少ない) という事で、多くの企業がWWWホームページを取り止めると予測する向きもある。 確かにWWWホームページを作れば見返りがあるという時期はもう過ぎ去り、投資負担 の割に見返りが少ない場合も十分考えられる。そして、そのため一部にWWWホーム ページをやめる企業も出る可能性はあるが、それらの企業は大きな間違いを犯してい る事に早晩、気付くであろう。WWWホームページを作る事は、会社案内のパンフレ ットを作成するのにコストがかかるのと同じで、会社を運営していく上での必要経費 となっているのである。これは今のところ、大企業か中企業レベルの会社の話であり 、小さな街のお店にとっての必要経費にはなっていないが、そのような日が来るのも 、そう遠くないだろう。
このように、インターネットは、もはや利用するのが当り前の状況で、世の中の本流 となっている。したがって、インターネットに本腰を入れるべきかどうか、もしま だ悩んでいる人達がいるとすれば、全く悩むべきではないと断言できる。
それでは、今、世の中で騒がれている事すべてが本流で、明日にも起こる事かという と、そういう訳ではない。これがブームの難しいところである。500ドル・パ ソコンが現在のパソコンを駆逐する、インターネットを使った電話が電話会社をつぶ す、エレクトロニック・コマースがビジネスのやり方を激変させる、等々、色々過激 な議論も出ている。これらの議論では、意見が人それぞれ、また、その人の立場によ って大きく異なる。
ここで大切なのは、次の2点ではないかと思う。
(1)世の中全体の流れとしてどのような方向に向かうか
(2)その流れが大きなものとなるのはいつ頃か
(1)について考えると、上の3つの議論のいずれの場合も、何らかの流れを引き起 こす事は間違いないであろう。しかし、それが大きな世の中の流れになるかどうか というと、まだ誰にもわからない。本流になるかもしれないし、また、小さなニッ チ市場で終わる可能性も十分にある。私なりの考え方は、以前のいくつかのレポー トに書いたので、参照していただければ幸いである。ただ、(2)について上の 3つの議論を考えてみると、いずれもここ1−2年で本流にはならない、という結論 は出せると思う。したがって、このような市場に参入しようと考える企業は、とり あえず1−2年はニッチ市場であるという認識が必要であろう(勿論、市場が大化けすればいうことはないが)。
以前にも書いたかもしれないが、私は各地でインターネットの講演等をする折、私の 予測は有効期限1年と言っている(インターネット関連の市場は極めて動きが早く、 本当は有効期限3ヵ月位と言いたいのだが)。遠い将来の事はともかく、まずここ 1−2年、何が本流で大事なものとなるのか、を認識しながら常に状況の変化にアン テナを張り、その変化に臨機応変に対応していく姿勢が必要であろう。
今回のレポートで丁度12回、1年になる。次回からは1年前に書いた事に変化がないか、確認しながらレポートを続けたい。
(8/01/96)
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