今回の投票率の高さを見ると、これは私だけではなく、多くの米国民が同じように考えていたことがよくわかる。自分なりに、何故今回の大統領選挙に興味を強く持ったか考えると、一つには、個人的に勝ってほしい候補が明確だったことが上げられる。正確に言うと、負けてほしい候補が明確だったということだが。
次に、戦前の予想が、4転5転して、Bush、Kerry両候補のどちらが有利かはっきりしなかった点も、注目を引いた大きな要素だろう。さらに、4年前の選挙で、Bush、Gore両候補の得票が極めて近く、最後に勝敗を決定したフロリダ州ではわずか500票余の差で、しかも間違いやすい投票用紙の問題もあって、米大統領選挙はじまって以来の大混乱を起こしたことだ。
今回も同じような問題が起こるのではないかと、選挙日前から、いろいろとうわさされていた。そして、案の定、大接戦となり、選挙の翌朝になっても、まだ確定結果が出ないという状況であった。結局、最後に結果を左右するオハイオ州で、十分差がついたということで、Kerry氏が敗北宣言をし、Bush大統領の勝利に終わったわけだが、投票結果をアメリカの地図で見ると、東と西海岸、それに一部中西部の北部地区がKerry支持で、残りの真中の州はすべてBush支持という結果となった。
実は、州単位で見るとこうなるが、さらにそれぞれの州の中の郡単位での投票結果を地図にしたものを見ると、もっと極端な結果になっている。たとえば、カリフォルニア州やニューヨーク州では、州としてはKerry氏が勝っているが、郡レベルで見ると、Kerry氏が勝っているのは、海岸沿いのほんの一部の大都市だけで、カリフォルニア州やニューヨーク州でも、内陸部はBush大統領への投票のほうが多い。例えば、私の住んでいる、サンフランシスコ湾近辺(通称Bay Area)の6つの郡では、Kerry候補に投票した人が71%に及んだが、カリフォルニア州全体で見ると、Kerry候補への投票は、56%にしかなっていない。
いろいろと問題の多いイラク戦争を起こし、その結果、国の財政も急激に悪化し、経済全体も決していい状態でないこの4年間だったにもかかわらず、何故Bush大統領が再選されたのか、私にはよくわからない。私の住んでいるカリフォルニアでは、多くの人がそのように思っているようだし、今回ほど、大統領を変えたいと思っている人が多かったこともなかったように思うが、結果はBush大統領でまた4年となってしまった。選挙のための広告合戦でのお金の使われ方も、史上最高だったと言われており、金持ちBushに有利に働いたのかもしれない。
Bushに投票した人の中には、Kerry氏でもあまり変わらない、と思った人も多かったように聞く。Kerry氏も議会をしょっちゅう休んだり、同じ案件に対して賛成、反対と頻繁にぶれたことを指摘されるなど、対抗馬としての弱さが目立ったということもあったように見える。それに、戦争中は大統領を変えるべきではない、という昔から言われていることを信じた保守的な人たちが多かったということだろうか。
Bush大統領の再選で、世の中がどうなるか、という政治的な話は私の専門外なので、これ以上は触れないことにするが、情報通信の振興という意味からすると、Bush大統領に目立った動きはこの4年みられないし、選挙中の発言を聞いても、ほとんど触れられていないのが現状である。ただ、この点では、Kerry氏もそれほどの差はなく、ブロードバンド振興のための税制優遇等、多少Bush大統領よりましという程度で、あまり差がなかったようである。
そういう意味では、いまさら4年前の話を蒸し返しても仕方がないが、情報通信振興に極めて積極的だったGore候補が、あのような負け方(全国の投票率ではGore候補のほうが上、また、フロリダで多くの無効票が出て、その多くがGore候補への票と思われるものだったため、もしこれらが無効にならなければ、Gore候補が勝っていたこと)をしたのは、とても残念であり、腹立たしかったのは、今も記憶に新しい。フロリダ州知事がBush大統領の弟というのも、なにやら胡散臭い感じがした。
それにしても、日本の小泉首相は米大統領選挙戦中からBush候補の支持を表明していたが、イラク戦争関連で何かBush大統領に貸しでも作っているという感じなのだろうか。選挙前の米国のテレビでは、小泉首相はBush大統領を支持しているが、日本国民は逆にKerry候補を支持していると、居酒屋でのインタビューを交えて伝えていたのが面白かった。
9月11日のテロ事件には直接関連のないイラクに戦争をしかけ、イラクに多大な資金と多くの犠牲者を出しているBush政権。その結果、財政が一挙に赤字になっている米国。「あ〜、またBushで4年」という大きなため息が、少なくとも私の周りからは、たくさん聞こえてくる。
(11/01/2004)
メディア通信トップページに戻る