ブラックという言葉にはいろいろなイメージがあり、ブラックマンデー(Black Monday)というと、1987年10月19日(月)に株価が急落した日を表す、マイナス的なものだが、ブラックフライデーは、その逆で、お店にとって売上が上がる、つまり黒字になる日、という意味でのブラックだ。Wikipediaなどによると、もともとは、その日の交通量が多くて大変というマイナスの意味でブラックフライデーという言葉が使われはじめたらしいが、今は黒字のブラックという良い意味で使われている場合が多い。ブラックフライデーは、お店のほうも、他店に負けず売上向上を図ろうと、特別セールを開催し、早朝5時くらいから開店する店も少なくない。そして、そのさらに何時間前の午前2時とか3時から列ができる、ということが全米各地でみられるのが、このブラックフライデーだ。
私は特にこの日にこだわって買い物することもないが、たまたま今年は息子が急ぎほしいものがあるというので、それに付き合って、家電量販店で有名なFry’sという店に午前9時ころに行ってみた。朝5時に殺到するような人はもうとっくに去って、混み具合もそこそこではないかと予想していったのだが、とんでもない。広大な店内を延々とレジに並ぶ人の長蛇の列。レジカウンターも20くらいは開いていたのではないかと思うが、一人ひとりがカートに山積みした買い物を持って並んでいるため、遅々として進まない。これではおそらく1時間以上は間違いなくかかりそうと判断し、ここでの買い物を断念することにしてしまった。
さて、オンライン・ショッピングの広がった現在は、わざわざこのような混雑した店に行かなくても、インターネットでショッピングができる。こちらもクリスマス商戦の開始という意味で、ブラックフライデーあたりから一斉にバーゲンセールを開始する。ただし、本当の目玉商品を買うには、やはり夜明け前から、(インターネット上ではなく)本当のお店に並ぶ必要がある。
なかでもインターネット・ショッピングがさかんなのが、ブラック・フライデーのあとの月曜日、ということで、サイバーマンデーという言葉が数年前に生まれた。実際、この日のインターネット・ショッピングによる売上はかなりのもので、今年は、この日一日だけで、昨年の21%増の7.33億ドル(約850億円)だったと、このような統計を取っているComScore社は述べている。大どころは、インターネット上で有名なAmazon.com、Yahoo Shopping、MSN Shopping、Overstock.com、物理的な店も有名なWal-Mart、Target、Best Buy、Circuit City、それにDell、Appleなどのメーカーが上位に名前を連ねている。
この時期のインターネットによるアクセスは通常を大幅に上回るため、サーバーがパンクしてサイトにアクセスが出来なかったり、そこまでいかなくても、応答時間が大幅に長くなったりという問題が発生することも少なくない。すでに過去にそのような経験をしている会社は、それなりに対応しているので、このような問題も減ってきているが、今年も大手デパートのSearsのサイトがブラックフライデーに7時間もアクセスできなくなるなどの問題が起こった。逆に去年大きな問題を引き起こしたAmazon.comやWal-Martなどでは、今年は準備万端で、問題なかったようだ。
さて、インターネット・ショッピングも、当然ブラックフライデーから活発になるわけだが、なぜその翌週の月曜日をサイバー・マンデーと呼ぶのだろうか。それには、もちろん訳がある。実は、この日は、Thanksgiving休日のあとの最初の出勤日となる会社が多いが、その日に会社のパソコンからインターネットでショッピングをする人が多いというのだ。日本のようにとなりの人がやっていることが見えるような職場環境(最近はついたてなどがあるオフィスも増えているが)では、ちょっと想像しにくいが、米国では、個室オフィスが多く、個室でなくても、少なくともついたてがあって、となりの人のやっていることが見えにくい環境なので、ひそかにオフィスでインターネット・ショッピングをすることも可能なわけだ。
サイバーマンデーには、インターネット・ショッピングをする人が多いということで、その日のインターネット上のバーゲンセール情報を集めたcybermonday.comというサイトまである。ここは、米国オンライン小売業者で作っているshop.orgという組織が運営している。実はサイバーマンデーという言葉は、このshop.orgが2005年に使い始めた言葉なのだ。
さて、こんなに会社でインターネット・ショッピングなどしていて問題はないのか、という疑問が当然出てくる。実際、ある調査会社の推定によると、会社でサイバーマンデーを含むクリスマス商戦期間にインターネット・ショッピングをする人は6,860万人といわれ、一度に12分程度時間を使っているとのことだ。これをコストに換算すると、約5億ドルとなり、これが経営者にとって、社員がオフィスでインターネット・ショッピングをすることによる損失の総計、ということになる。これは決して小さい数字のようには思えないが、どうやら経営者達は、この損失よりも、このようなことをさせないようにするための手間や社員のモラル低下(細かいことにうるさい経営者に嫌気をさす、ということだろうか)を考えると、黙認している場合が多い、ということのようだ。
さて、日本でもこれから年末にかけて、お歳暮やクリスマス・プレゼント、お正月ものなどの買い物に忙しい季節であり、店の混雑を避けてインターネット・シッピングをする人も年々増えていることと思う。オフィスでのついたても増え、プライバシーが守られだした日本のオフィスでは、どれくらいの人がインターネット・ショッピングをしているのだろうか?
(12/01/2007)
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