希望21「元気フェスタ」報告

チェルノブイリ子ども基金代表 広河隆一

―8月22日北沢タウンホールでの報告会より―


子どもたちの状況

 甲状腺の手術をした子どもの特別保養は、今年で3年目になります。甲状腺の異常のために手術を受けた子どもたちは、一番保養が必要なのに放置されているという訴えがあり、わたしたちは特にこの子どもたちに焦点をあてて救援をしてきました。こういう子は病気の抵抗力が非常に落ちています。転移を防ぐためにも、体の抵抗力をつけ、病気を忘れて楽しい時間をすごすことによって病気に打ち勝つ精神力をつけることが必要です。こういった子どもたちの保養は当初ほとんどスゥエーデンと日本だけでやっていましたが、実績を経て、最近ではノルウェー、フランスなど、いろいろな国が受け入れを表明し、大変な時期からは脱しつつあります。

 しかし、だからといって子どもたちの状況が改善されているわけではありません。夏の一時期だけ、子どもたちはいい環境で保養できるわけですが、彼等は自分達の家に戻れば同じ大変な状況が待っているわけです。特に今回保養に参加した子どもたちの中には、単に病気だけではなく、いろんな問題を抱えている子どもたちが大勢いました。チェルノブイリは健康だけではなく、家庭も崩壊させていきます。貧困問題も大きいですが、子どもが病気になっても親がちゃんと世話しない場合がずいぶんあります。今回ひきうけたある子どもは両親ともアル中で、手術はしましたが、そのあと必要な薬もろくに与えられず、ホルモン異常をきたしていました。14歳のその女の子は学校にも行けず、読み書きもできません。サナトリウムにきたときには体中にシラミがいて、職員が洗って新しい服を与えました。最初は口ひとつきかなかったんですけど、何日かたつとだんだん溶け込んで他の子どもたちとも遊ぶようになりました。母子家庭の子、両親ともいない子、両親がいても、父親が原発関係で働いていたために被曝して職を失った人、あるいは事故の処理班に駆り出されたために放射能をあびてしまって障害者になり、仕事ができない人もずいぶんいます。 

 ウクライナ・ベラルーシで、15歳以下の甲状腺ガンの子どもの総数が何人かはっきりと今はわかりませんが、そのうち3分の1くらいは今回の企画の対象になったはずです。ロシアはほとんど救援の手が伸びていないために、どれだけの子どもが甲状腺ガンになっているのか数字さえわからない状態ですが、われわれにはフォローする力がありません。

 特別保養に参加する子どもの決定は、現地の甲状腺のガンの子どもたちを抱える親の会と連絡をとって行ないました。保養に参加できるのか、どういう病状かという、医者の証明書がない子どもは参加できません。しかし書類をそろえるのも大変です。地方に住んでいる子どもは、病院に行って書類をもらうために交通費・宿泊費が必要で、親も仕事を休まなければなりません。旅費さえないような子どもたちがたくさんいます。経済危機はこういう弱い、被害にあっている子どもたちを直撃しています。それでも医者の証明書をなしですますというわけにはいかないので、現地救援団体には貧困家庭のための交通費補助を行なっています。


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