希望21「元気フェスタ」報告

チェルノブイリ子ども基金代表 広河隆一

―8月22日北沢タウンホールでの報告会より―


写真教室

 私は写真を教えました。980円のキティちゃんカメラというのを30台ぐらい持っていったんですが、たった数日教えただけで素晴らしい写真(表紙参照)を撮ったので驚きました。子どもたちは教えたことを非常に一生懸命に吸収します。一見普通に見えますが、重い病気を抱えたために生き急ぎしているのか、他の子よりずっと人生観がしっかりしている。真摯に、こういう機会を逃さないという感じです。別れの日には、子どもたちはウクライナもベラルーシもなく仲良くなっていたので、みんな泣きながら別れをおしんでいました。

 現地ではさまざまな形で差別があります。私が会った避難民の人たちはキエフの異性とつきあうことに抵抗を持っていました。結婚の約束をしても、避難民であることがわかって駄目になったという話をいくつも聞きました。相手方の親の反対はかなりあるようです。同じように、甲状腺の手術を受けた子どもたちも、喉の手術の跡が一目瞭然なので、この子はたいへんな放射能をあびた、病気になったとわかってしまいます。ここでは元気にしていますが、自分の町に戻ったら、ほとんど人前には出ないで部屋にひきこもっているような子が多いのです。首にはスカーフや首飾りをして隠したり、水泳の授業はなるべく参加しない、異性の前では非常に臆病になる。結婚しても相手にたえず放射能のことを持ち出されていじめられる。そういう話をずいぶん聞きました。自分達と同じ境遇にある子どもたち同士では気持ちを開いてつきあっていけるから、子どもたちは「希望21」では生き生きするのでしょう。ここで恋人をみつけたいという気持ちもあるようです。

 現地からは来年も同じような日本の催しを行なってほしいと言われていますが、まだ答えは出していません。甲状腺の手術をした子どもたちの保養は当然続けていかなければと考えています。こういうふうに日本文化を教えるということは、精神的な意義はあると思いますが、それに加えて、子どもたちが16歳以上になったときにどうしていくのか、自立の問題で力になれるような、将来の職業、なんらかの技術、そういうものにちょっとでも結び付くような、あるいはそういう方向を自分でも探すことができる助けになるような、そんな企画ができないかとも考えています。


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