希望21「元気フェスタ」報告

チェルノブイリ子ども基金代表 広河隆一

―8月22日北沢タウンホールでの報告会より―


貧困家庭の子どもの里親支援開始について

 初期の頃は、外国に保養に行ける子どもは公正な審査を経ないで、議長とか有力者の子どもが病気とは関係なしに送られているというようなことが言われていました。現在は毎年数万人の子どもたちがヨーロッパへ行きますので、えこひいきはなくなっているようですが、一度だけでなく年に何度も行けるような機会は、こういう甲状腺の手術をした子どもたちにはまだ多くは与えられていません。1度も外国に行っていない子もかなりいます。外国へ行くのには疲労の問題もあります。ドイツとかフランスへはバスで30数時間かけて行きます。スゥエーデンなどは30時間バスで行ってから船、バスと決して楽な旅ではないわけです。それでも子どもたちは非常に喜んでいます。

 しかしそれ以上に子どもは「希望21」の保養を非常に喜んでいます。しかし特に大きな病気を抱えた子どもの親は、16歳以上も援助が続くような家族とのパイプが欲しいと願っています。ヨーロッパへ行った子どもたちは、いい家族に出会うと毎年呼んでくれる可能性があるし、大きな病気になったときに手術代を出してくれる可能性もある。われわれも援助している「家族の救援」を支援しているドイツの団体は、本当に田舎の村が20くらい集まった地域にあります。そんなにお金があるわけでもない。しかしそこがずっと車をさしむけて、必要なものを送り続け、子どもを預かり続け、何千何万という子どもたちをホームステイさせてきました。このドイツの救援団体が、こんなふうに言っていました。

「チェルノブイリの救援団体は、いつまでもつかわからない。われわれの力もずいぶん弱くなっている。経済的な問題もあるし、世界中で次々と問題が起こって人々の関心も薄れ、他にやらなければならないこともどんどん増えている。だから自分たちはどれだけもつかはわからないが、少なくとも子どもを受け入れた家族と子どもたちのパイプは続く。自分たちが消えても、その親たちから子どもへの救援は続いていくだろう」

 われわれはそういうパイプ作りは行なっていないのですが、しかし外国からの保養申し出を蹴って「希望21」に来てくれた子ども、3年続けて来てくれた子どもたちがいるわけです。どうしてもここがいいと主張して来てくれて、そして非常に喜んでくれるわけですけど、そういう子どもたちを、15歳すぎました、終わりですと放り出すわけにはいかないのではないか。

 そこで子ども基金では、現地の特に貧困家庭とか、薬も満足に得られないような家庭、親が子どもの面倒をちゃんとみることができないような家庭に、1対1で、里親制度のようなものを始めることにしました。個人的レベルでは行なっていたんですが、先日の運営委員会で、基金として取り組むことを決定しました。読み書きもできないまま放置されている、必要なホルモン剤も投与されない、病院に検診に行くこともできない、そういった子に、最低レベルの補助ができるように、1カ月50$というドル単位なんですけれども、ひとりの子どもに対してひとりの里親がつくという形で補助し続けていく。最低2年単位は続けてもらうという形で始めようと思います。ドイツのように大量の子どもを対象にはできませんが、一番救援が必要な子どもたちに対して、これからパイプ作りをはじめようと思います。


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