(ロシア語書店勤務・ロシア語通訳) 「希望21」での生活には、すぐに溶け込めました。子どもたちはとても元気で明るく、小さい子たちは食べちゃいたいほどかわいらしいし、少し大人っぽい女の子は見とれてしまうほどきれいです。私たちが大きな荷物を持って歩いていると、そばに寄ってきて運ぶのを手伝ってくれます。 「少林寺拳法教室」の初日はビデオを見せて、特に、護身術であって自分から攻撃をするものでないこと、相手を思いやる気持ちが大切だということを強調しました。ビデオには日本の子どもたちの練習風景や、独学で少林寺拳法を学んだ一人のウクライナ人の紹介もあり、みんな興味を持ってくれたようでした。初めは道着を着て帯を締めるのにもひと騒動でしたが、日を重ねるにつれみんなが真剣になっていくのがわかりました。こちらの説明を聞くだけでなく、「この技はこれでいいのか見てくれ」と言ってきてくれた時には、飛び上がってしまいたいほど嬉しかったです。一番心配していた怪我もなく、みんなが楽しく練習してくれたことが何よりよかったと思っています。最後の授業で「みんなと会えてとてもうれしかった。ここで一緒に練習したことをずっと忘れません」と言うと、子どもたちが口々に「僕も」「私も」と言ってくれました。あの時のあの子たちの汗で輝いた顔、こちらに注がれた美しい目を、私は決して忘れることはないでしょう。 別れの日、ベラルーシの子どもたちを見送った時のことです。いつも元気一杯で授業にも積極的で、私を見ると「ササキマリーッ!」と手を振ってくれたイリーナが、バスの一番前のところに立ってこちらに笑顔で手を振っていました。手を振り返していたところ、近くにいた広河さんが言いました。「あの子はあんなに元気そうにしてるけど、家はすごく貧乏なんだ。だからここでは強がって、いつも明るくふるまっていたんだ」と。そんなところは微塵も見せなかったのに。彼女がそんな辛い境遇だとは想像もしていませんでした。見た目どおりの元気で明るい子だとばかり思っていました。そのうち手を振るイリーナの笑顔がだんだん悲しい顔になり、いつしか泣き顔になっていました。でも彼女は涙をぬぐいながら必死で笑顔になろうとして、ドアが閉まるまで私たちに向かって大きく手を振り続けていました。あの時のイリーナのことを思い出すと、私は今でも泣いてしまいます。 来年も、もしできるならボランティアに参加して再会したい。それが無理でも今後もあの子たちのためにできることがあればしていきたいと思っています。 |