カリーナ東京公演 報告&感想

(4月に行なわれた東京公演の報告です。その他の報告は前号に掲載)


山口 るみ

 7〜13才という年齢の子どもたちにとって、親元を離れ、気候も文化も異なる日本での3週間にも及ぶ旅は、一大事であったことと思う。まして、全国6カ所でコンサートを行いながら…。

 「チェルボナ・カリーナ」の子どもたちは、だが、元気で明るかった。コンサート・ツアーの意味を充分に理解しており、舞台の上ではみごとなプロ根性を見せてくれた。そんな姿に、私たちの方が逆に励まされてしまっていた。

 4月14日、彼らによる救援コンサートの最終公演は、東京・セシオン杉並ホールにて行われた。あいにくの天候にも関わらず当日券の入場者もかなりあり、開演前にはホールはほぼ満席となった。

 第1部は、当基金代表の広河隆一さんによる現地報告と子どもたちの紹介で始まった。 続いて、20代のころ甲状腺ガンの手術を受けられたという脚本家の大石静さんが、チェルノブイリ被災地に小児甲状腺ガンが多く発生している現状に心を痛め、病気に苦しむ子どもたちを励ましたいとご自身の体験を語られた。歌手の加藤登紀子さんは、チェルノブイリ原発事故をテーマに作った、「ディーマ」「チェルノブイリ」の2曲を含むミニコンサートで、力強い歌声を聞かせてくれた。

 第2部はチェルボナ・カリーナが、その歌と踊りで観客を魅了した。今回私は、舞台係として参加させてもらったのだが、舞台の袖にも暖かな拍手や笑い声が届いてきて、会場が和やかな雰囲気に包まれているのが感じられた。

 ウクライナの民族衣装や、バヤン、バンドゥーラといった民族楽器も華を添えた。それらを間近で見る機会を得たが、祖母や母親が丹念に刺繍を施したという手縫いの衣装などは清楚でとても美しかった。会場には2年前のコンサートを見て感動し、今回も足を運んでくれた方が大勢いらしたようだが、一層磨かれた歌と踊りに驚かれたのではないだろうか。公演後のアンケートには早くも次の公演を望む声が多く見られた。

 事故から12年の月日が流れても、『チェルノブイリ』は終りを告げるどころか、今もなお人々を苦しめ、翻弄し続けている。舞台で生き生きと歌い、踊った“『事故後』生まれ”の「カリーナ」たちも例外ではいられないという事実が、とても重く感じられた。コンサートはその事実をあらためて見つめ直し、息の長い支援の重要性を広く訴える、大事な機会になったと思う。


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