「チェルノブイリ・ヒロシマコンサート」が本市において開催されるにあたり、関係者の皆様の平和の取り組みに対して深く敬意を表します。 広島は54年前の体験から、原子爆弾のもたらした人間的悲惨、とりわけ放射線障害という人類史上初めての惨禍を広く世界へ知らせ、一貫して、あらゆる国のあらゆる核実験に反対し、核兵器の廃絶を訴えてまいりました。 しかし残念ながら、昨年5月、インド、パキスタンが相次いで核実験を強行しました。さらに、米国やロシアが臨界前核実験を繰り返すなど、核保有国による核軍縮も遅々として進まず、新たな核拡散の動きが生じることが懸念されています。国際社会では現在、核保有国自らの核軍縮と核不拡散体制の強化が緊急の課題になっており、ヒロシマの果たすべき責務もますます大きくなっております。こうした中で、私たちは国家の枠を超えて都市や市民が連帯の輪を広げることにより、核兵器廃絶の国際世論の醸成を図り、その力で核保有国の政策を変えさせていく努力を続けていかなければならないと考えております。その意味で、広島のこれまでの被爆者医療や調査研究の蓄積を生かした支援などを通じて、13年前の原子力発電所の事故により多くの方が今なお放射能の被害に苦しんでいるチェルノブイリをはじめ、世界中の核被害者との連携を深め、核兵器廃絶に向けたネットワークを構築していくことは大変意義深いことと考えております。今回のコンサートの開催が、そうしたネットワーク構築の一助となることを期待しております。 1999年5月10日 広島市長 秋葉忠利 (広島公演プログラムより) |