モスクワ便り

РАДИО МОСКВА / RADIO MOSCOW


 やはり、ロシアの冬を甘く見てはいけないようです。この春、モスクワは一気に「夏」を思わせる陽気となり、4月の末には20度以上にまであがりました。おかげで、ちょっと前まで、半年近くも白と黒のモノトーンだった世界も、鮮やかな「カラー」の世界にあっという間に生まれ変わりました。ところがです。「これがロシアの春か」などと浮かれていたのもつかの間、5月に入ると突如再び寒波がやってきて、夜はマイナス5度くらい、昼間も日によって5度以下などということになり、挙句に吹雪に凍える羽目になりました。そして、すでに切れていた町の集中暖房も数日の間ですが、再び復活しました。

 一方、この予期せぬ寒波に驚く中、またまた突然、大統領はプリマコフ首相を解任してしまいました。去年の春から数えて、今度で3回目の首相の解任です。自分が指名した首相を毎度、毎度クビにしなくてはならないということは、よくよく人を見る目がないに違いありません。同じようにして指名された新首相も、また失敗するのでしょう。もっとも、こうした政治の動きは、一般市民にはまったくといって良いほど関係ないものです。

 とにかく明日はどうなるか分からない。まさに「ロシア」を実感した春でした。

 さて、原発事故13周年にあたった今年の4月26日ですが、モスクワでは特に大きな動きは見られませんでした。毎年恒例の追悼式典が、ミチンスコエ墓地(初期消火にあたった消防士らが埋葬されている)で行われた程度です。個人的には、この問題のロシアでの扱いの小ささを改めて実感する日となりました。特に、私たちの放送局のニュース原稿では最後から2番目の扱いにすぎませんでした。この放送は、あくまでロシア政府の公式的立場を代弁(要するにプロパガンダ)するものですから、これはこのままこの問題に対するロシア政府の立場を反映していると見ることもできます。もちろん、新聞や一部の民放などはもっと大きな扱いで報じましたが、やはり不可解な点があります。これは、これまでにも述べたことですが、何故かロシア国内の被災者の現状といったものは殆ど全くといって良いほど触れられていないということです。つまり、ロシアの新聞を読んでも、何故かロシアのことはわからないのです。ウクライナやベラルーシと比べても際立っています。やはり、これがいわゆる核保有国の論理なのでしょうか…「ユーゴスラビア問題」ももちろん重要ですが、それ以前にもう少し足元の問題にもきちんと目をむけて欲しいというのが私の実感です。

(平野進一郎)

ニュース目次へ