99夏日本文化交流会を振り返って(前号の続き)


「柔道教室」 / 乗井達守さん(高校2年生)

 「南」では、生まれてこのかた経験したことがないような充実した日々をすごしました。学校の宿題を持って行きましたが、結局まったくやらずじまいでした。宿題をやるよりは、1分でも多く子ども達といたいと思いました。実を言うと、ほんとに申し訳ないんですが日本人のミーティングにも子ども達と時を忘れて遊んでて、何回か遅れてしまいました。それぐらい、子ども達と遊んだり話をするのは面白かった。ピアノを弾いていても、リクエストとかアンコールとかしてくれて、ここにきて良かったと何度も思いました。

 子ども達と夜ディスコで踊るのがとても楽しかった。「南」に来るまでは、ディスコで踊ったことなんかなくてどう踊れば良いのか分かりませんでした。でも踊り方は子ども達が全部教えてくれました。子ども達もダンスがとても好きでした。夜10時になって外のダンスの音が部屋の中にも聞こえてくると、教室の途中でも子ども達はそわそわし始めました(と言っても私自身もですが)。

 柔道教室も予想以上にみんな来てくれてとてもうれしかったです。柔道とか空手とか、武道に関して子ども達<特に男の子>はとても強い関心を持っていました。それにしても、教室紹介で柔道を紹介した後、いきなり「闘おう」といわれたのにはびっくりしました。それぐらい、子どもたちはここでは元気でした。

 でも、子ども達のセラピーを担当している心理学の先生は、子ども達は、恋愛や将来について大きな不安を抱えていると言っていました。広河さんは、子ども達はまた家に帰れば家に閉じこもりがちになったり、内気になったりすると言っていました。僕はそんなことを聞くと、ものすごく悲しくて、泣きそうになりました。でも、絶対子ども達の前では泣かないと誓いました。子ども達の前で泣いたら、何のために来たのか分からなくなると僕は思いました。僕は、この保養で子ども達が少しでも元気になってくれたらと思っていました。だから、子ども達の前では泣かないようにと思いました。それでも夜、子ども達の置かれている状況を考えてると、逆に昼間の子ども達のとっても明るい様子と重なって、涙が止まりませんでした。

 もう一つ心理学の先生が言っていたことがあります。それは、子ども達の描く絵が明るくなってきたということです。それで、子ども達の心の傷は完全に癒えたなんていうのは大きな間違いだとは思います。でも、それを聞いて僕はとてもうれしかった。けっして悪いほうにばかり進んでいるんじゃないと思いました。

 「南」では、ほんとにたくさんの友達ができました。僕は「南」では、彼らに何かしてあげたんじゃなくて、反対に面倒を見てもらっていました。僕はお礼を言いたい。それを再会した時に言えたら良いなと今思っています。


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