5月に入り、ベラルーシでもようやく本格的な春らしくなりました。ミンスクは緑が多い町なので、
木々の芽が開くと景色が一変します。日本のサクラほど華やかではないのですが、サクラに似たリンゴの花は町中でも多く見られます。タンポポが野原一面に咲
き、雑草とは言いながらなかなか美しいものです。5月末の現在はライラックの花が見事です。そろそろポプラの綿毛が空中を舞い始めました。日と場所によっ
ては、まるで雪が降っているように見えることもあります。
外は緑になりましたが、今年の5月は気温が低く、20℃を超えた日はほとんどありませんでした。家庭や職場での集中暖房は4月中旬に切られてしまうのです
が、その後が寒く、室内では真冬より厚着をしなければならないことも稀ではありません。特に夜中は、土の中の温度が氷点下になった日も何回かありました。
毎年春になると、週末郊外に出かけ、家庭菜園で畑仕事をする人も多くなるのですが、夏に向けた苗の植え付けがなかなかできず、皆困っていました。またこの
時期になると、「冬の暖房期間に備えて」お湯の供給がストップします。これはモスクワなどでも毎年必ず行われていることで、一定期間お湯を止め、暖房にも
使われる供給ネットワークの損傷がないか、点検・補修作業をするのだそうです。数年前から大統領の命があったとかないとかで、これを各地区2週間以内に抑
えるようになったそうですが、この間、台所でお湯を沸かしたり、別の地区に住む親戚などに風呂を使わせてもらったり、あるい
は公衆浴場を利用したりと、かなり煩わしいことになります。別途湯沸かしを備え付けている場合もありますが、多くの家庭にとって避けられない夏の風物詩に
なっています。
子供たちは5月末から6月初めで学校が終わり、早くも3カ月もの夏休みに突入です。この時期は日も長いので、夜10時になっても外で子供の遊ぶ声が聞こえ
ます。首都ミンスクでは現在、いたるところで町並みをきれいにしようとする試みが行われています。建物の外壁を修復したり、道路のアスファルトを舗装しな
おしたり、歩道を整備したりといったことです。ドイツ占領下からのベラルーシ解放60周年(今年7月)と、来年5月の戦勝60年の二大イベントが目標に
なっているようです。町がきれいになるのはそれ自体、歓迎すべきことなのですが、ここまで一斉にしなくても、と思ってしまいます。道路の通行止めで渋滞が
ひどく、また歩道全体が掘り返されてどこを歩いたらいいか分からない場所もあるほどです。おそらくこれまであまりにも放置されてきたので、やるとなると一
度に手をつけざるを得ないのではないのでしょうか。
戦後60年という節目の年を迎えるのは日本も同じですが、戦勝国である旧ソ連の多くの国では、5月9日の戦勝記念日をソ連時代に引き続き、国民の祝日とし
てかなり盛大に祝います。第二次大戦(旧ソ連にとっての戦争は「大祖国戦争」と言う)の被害は甚大で、特にナチス・ドイツの占領下に置かれたベラルーシや
ウクライナでは、ソ連軍がこれを解放した日(ミンスクでは7月3日)を記念日として毎年祝います。ベラルーシ国内の各都市には、たいてい戦没者に捧げられ
た記念碑が有り、その周辺などで記念行事が開催されるほか、戦争に参加した年配の人々が胸に沢山の勲章をつけて通りを歩く姿も見られます。テレビでもこの
時期は戦争映画が何本も放映され、日本の終戦記念日とはかなり様子が違います。しかし旧ソ連でも若年層の間で戦争を含む歴史への理解と関心が薄れつつある
とのことで、こうした一連の行事が戦争を知らない世代にはたらきかけ、これら記念日の意味を再度考えさせるものであればと願います。
花田朋子
*花田朋子さんは、ベラルーシの首都ミンスク在住。現在、日本大使館勤務。
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