神奈川うまの道ネットワーク研究会・趣旨 

 豊かな自然に恵まれた神奈川県に、馬に乗ってのんびり散策したり、山野を自由に駆け回るホース・トレッキングを楽しむことの出来る「うまの道」を張り巡らせたい——という思いを込めて、私たちは2005年6月に「神奈川うまの道ネットワーク研究会」を設立しました。馬を愛する多くの皆さんが以下の趣旨にご賛同の上、会員として参加していただくよう呼びかけます。

 1.馬文化の復興を 

 日本では戦後、クルマ社会の訪れと共に、あまりにも慌てて暮らしの中から馬を放逐してしまい、そのため馬と言えば競馬か馬場馬術しか思い浮かばないという寂しい状況が続いてきました。ところが、欧米諸国を見ると、いくらクルマ社会になったとはいえ、馬は数千年に及ぶ人間の友であり生活に根ざした大切な文化であるという考え方に立って、その保全に力を注いできました。ドイツの農村に行けば、クルマの轍の分だけ舗装して真ん中は草のまま残して馬が歩けるようにした農道を見ることができます。フランスでは、どこの村にも馬のいる宿屋があって、馬を借りて城めぐりをしたり隣村の次の宿屋まで森づたいにトレッキングすることができ、そのようにして馬を楽しみながら国内を旅するためのガイドブックも出ています。そういうこともあって、人口6000万人弱のフランスで乗馬人口は800万で、その7割は女性と言われており、馬が観光、演劇、芸術、青少年教育、障害者セラピーなど多様な分野にまたがる一大文化産業となっています。

  我々日本人も、南部曲家に象徴されるように、馬を家の中に置いて家族の一員のようにして一緒に暮らし、農耕や木材の切り出しや荷物の運搬などの実用に役立てただけでなく、それで大人も子どもも遊ぶことを通じていのちの大切さや自然循環の摂理を学び合い、あるいは亡くなった馬を馬頭観音を建てて弔うことで信仰にまで繋げてきた、長い長い伝統を持っています。私たちは、日本が金稼ぎに追われた発展途上国状態をようやく脱して世界第一級の成熟先進国の入り口に立った今だからこそ、欧米に学びながら、暮らしの中の文化としての「馬」を復興させたいと思うのです。そのために、まず、ただ観るだけの競馬でもない、一部の人々の高尚趣味になりがちの馬術でもない、誰もがいつでも気楽に馬に親しみ、いま流行の野外生活に新しい楽しみを付け加え、そして子どもたちにもいのちと自然共生の大切さを味わう機会を与えることのできるような基盤として、「うまの道」の整備とそれに必要な人材や施設の涵養について、まず神奈川において志のある方々の結集を図り、研究と論議を始めたいと考えました。

 2.北海道に学んで 

 北海道には、札幌に本拠を置く社団法人「北海道うまの道ネットワーク協会」があり、長年にわたり北海道に「うまの道」を張り巡らせるための活動を繰り広げてきました。現在では、約40の乗馬クラブやホーストレッキング施設のほか、その趣旨に賛同する多くの企業や個人を会員として、うまの道についての調査・研究、情報の提供、トレッキングのイベントやエンデュランス競技の助成、馬に関わる地域振興の支援などに取り組んできました。私たちは、その先駆的な活動に学びながら、この神奈川の地において、そのような可能性を探求したいと思います。もちろん、神奈川に限定するつもりはなくて、この考え方に共鳴する首都圏の各方面のみなさんにも加わって頂いて、機が熟せば「関東うまの道ネットワーク協会」といった形に発展させることを願っていますが、取り敢えずは神奈川から新しい波動を起こしたいと考えます。

  神奈川県は、首都圏の一角でありながら、有り余るほどの自然を持っています。富士箱根伊豆国立公園のうち箱根・湯河原は神奈川であり、また丹沢大山国定公園やその北側の津久井・相模湖周辺があり、真鶴半島から三浦半島にかけては豊穣な相模湾とその砂浜が広がっていて、どうにでも「うまの道」を開発することが可能でしょう。驚くのは、磯子プリンスホテルの裏手のあたりから鎌倉周辺や湘南国際村を経て三浦半島の先端までは、市民の森やゴルフ場を含めてほとんど一連なりの緑のベルトが広がっていて、市民の森の散策路やゴルフ場脇をうまく繋げば、ほぼ横浜横須賀道路に沿って、数十キロに及ぶ「うまの道」を設定することが不可能でないことです。さらに、箱根を越えれば伊豆や御殿場があり(静岡県)、北には三多摩(東京都)から秩父山系(埼玉県・山梨県)が広がり、海を渡れば上総・安房(千葉県)の奥深い森があって、夢はどこまでも広がります。 

 また神奈川県には、野外乗馬に取り組んできたいくつもの乗馬クラブがあり、障害者乗馬で先駆的な役割を果たしてきた施設もあり、さらには鎌倉の流鏑馬など信仰と結びついた馬文化の伝統も生きています。そうしたことを思うと、神奈川こそが北海道に続いて馬文化復興の担い手として名乗りをあげる条件は揃っていると捉えるべきではないでしょうか。 

3.研究会の進め方  

 「神奈川うまの道ネットワーク研究会」は、神奈川県内を中心として乗馬クラブの経営者・会員はじめ馬事愛好家、障害者乗馬関係者、教育界、自治体などに広く呼びかけて、法人及び個人会員として参加を仰ぎ、定期的に会合を開いて、およそ次のようなテーマに取り組みたいと考えています。 

(1)神奈川県を中心とする関東圏の馬に関わる歴史・文化の調査・研究

 (2)馬で散策し、あるいはホーストレッキングやエンデュランス競技を行うことのできる「うまの道」のルート開発と試乗、それに必要な施設などの整備

 (3)外乗に関わるクラブ・施設、ルート、料金、条件などの詳細情報の収拾と一般向けの紹介 

(4)馬と関わるイベントの企画・支援と町おこし・地域振興への貢献 

(5)特に子どもや障害者を対象とした馬事知識の普及と試乗体験の活動

 (6)北海道はじめ他地域の「うまの道」に関心ある人々との交流

 (7)その他

・当面、「研究会」として活動し、条件が整い次第NPO法人として法人格を得て「協会」へと発展させる。

・社団法人北海道うまの道ネットワーク協会とは緊密な連携をしていく。  

・当分の間、事務局は乗馬クラブ「クリエ三浦」に置く。  

事務局連絡先:電話 046−888−4059 FAX 046−889−2029        E-mail   kg-umanomichi-nt@abp.nifty.com         

Homepage http://www.smn.co.jp /kg-umanomichi/index.html   

 この趣旨をご理解の上、積極的に参加して頂くことを希望します。              

                    神奈川馬の道ネットワーク研究会 

                         会長    高野 孟                     

                        事務局長  須江 隆三