●[鴨川報告]稲刈りに50人が大集合!
鴨川自然王国で9月15〜16日、待望の稲刈りが行われ、天候不順の中、棚田トラスト会員と農林業ボランティアを合わせて約50人が集まり、トラストの田んぼ4反のうち残り1反半を鎌で手刈りし笹がけする作業を行いました。日帰りの人、余所に泊まる予定を立てている人、現地スタッフを除いて、王国に宿泊する人33人のうち女性が17人で、史上初めて!女性が男性を上回りました。
「残り」というのは、今年は高温多湿で米の育成が1週間以上も早く、予定されたこの稲刈りイベントまで待てないということで、われわれを指導してくれている現地農家の石田三示さん、福井訊さんのほうで機械刈りで刈り入れて貰うことにしたのですが、2反半ほど刈った段階で連日雨になって田がズブズブにぬかるんで機械を入れられなくなり、幸いにも1反半が残ったというわけです。
15日は、朝から時折激しく雨が降る不安定な天気。どうなのかなあと心配していると、作業の始まる午後1時頃には雨が上がって薄日さえ差して、無事刈り入れにかかることが出来たとはいうものの、ここ独特の粘土質の田泥は膝近くまで潜るほどグチャグチャで、長靴では泥水は入るし足は抜けなくなるしで、やはり田んぼにはそれ専用の「田植え足袋」に勝ものはないことを痛感させられる難作業でした。5時までかかって約1反弱の作業を終え、風呂で汗というより泥を流した後は、藤本国王が自ら捕獲し処刑した鶏2羽を用いた鍋を中心とした豪華メニューで大宴会。1人倒れ、2人がサウナに行き、最後に残った数名は午前2時くらいまで飲んだとのことです。
翌日も台風の影響で朝から雨でしたが、朝食が終わる頃には上がって、最後の5畝余りを収穫しました。2日間を通じて、泥に足を取られて尻餅をついた者は、昨年同様、1名。鎌で手を怪我した者は、昨年はゼロだったのに今年は2名あったのが残念でした。足場が悪いので無理な姿勢で刈ろうとすると怪我をします。来年は気を付けましょう。しかし皆さん元気で、16日午前にトラスト分の作業を終えてカレーライスの昼食をとって一応解散となったあとも、「物足りない」「まだやりたい」という方がいて、さらに遅れてその時間に到着した3人組もいたので、ジャガイモを少し掘った後、三示さんのところのまだ終わっていない田んぼの刈り入れを手伝いに行きました。三示さんの奥さんが大いに感謝してビール1ケースを届けてくれたので、夕方はそれでまた盛り上がったのでした。
実りはいいようで、平地の潅漑の行き届いた田んぼと違って天水頼りの山間の棚田で、しかも無農薬もしくは超低農薬、無化学肥料では、普通は反当たり3.5〜4俵が精一杯ですが、たぶん今年は4〜5俵は獲れたようです。一応4俵として、4反で16俵〜960キロ。それを40人(口)×年間3万円でトラスとしているので、1人当たりの取り分は玄米で24キロ。単純に割り算すると、キロ1250円ということになってべらぼうですが、そういう損得勘定を超えて、自分らも楽しみながら棚田を保全することが何よりの趣旨ですから、トラスト会員のみなさんはご了解下さい。収穫分は10月以降、玄米か白米でお届けします。全体としては無農薬米がやや多いですが、残りは箱苗の段階でゾウムシ予防の農薬を少量用いた超低農薬米(田植え後に散布すると何倍も撒かなければならないが、箱苗段階だと少量で済み、しかも普通の半分程度しか撒いていない)もあり、両者を均等に分けるようにします。
大豆トラストのほうは、次回10月14〜15日の集合の際に収穫する予定です。1反で2俵=120キロ収穫予定で、32人(口)でトラストしているので、1人当たり4キロ弱。大豆のままか、99年産味噌の形で来年1月末にお届けすることになります。
来年もトラストを続けるかどうか、続ける場合にどういう形にするか(反数を増やせるかなど)は、今年の取り組みを世話人会でよく総括した上で、改めてお知らせするようにしますが、会員の皆さんからもご意見・ご要望をお寄せ下さい。
●牛乳って何だ?
雪印乳業の食中毒事件で驚いたのは、この老舗企業の衛生管理のずさんさもさることながら、それ以前に、「加工乳」を「牛乳」とたいして違わないもの、あるいは少しだけ加工をほどこしておいしくしたり低脂肪化したものくらいに思って平気で飲んでいた、われわれ自身の無知ぶりでした。
本通信読者である大阪読売の斎藤喬編集委員は、8月26日付同紙夕刊のコラム「まち景色・ひと模様」で、「人間は生まれたらまず母乳を飲む。母乳のあと牛乳にする。命に最も近い食べ物が牛乳……。確かに私たちは企業のずさんさの被害者に違いない。だが、自分の安全を、自分で確保する努力をしなかった私たちにも、責任がある」と書きましたが、さっそく読者から「新聞は雪印を責めないで読者を責めるの?」「加害者の悪事から目をそらそうとする許しがたい内容」と抗議があったそうです。斎藤さんは9月5日付同欄で再論し、ドイツなどでは牛乳は「馬車の距離」内での地域流通が当たり前なのに、日本では米国の粉乳技術を導入して長距離輸送・大量流通に道を開き、牛乳として市販されるものの大半が粉乳を加工した“模造品”であるにもかかわらず、消費者はそのことを変だとも思わずに受け入れてきたと指摘、「馬車の距離を超えた巨大な社会システムに“世間”が埋没したのだ」と書きました。
ふつうわれわれが「牛乳」だと思って飲んでいる「飲用牛乳」には、(本当の)「牛乳」と「加工乳」があります。「牛乳」は、搾ったままの生乳に他のものを加えることなく、飲用に適するよう衛生的に処理したものであるのに対し、「加工乳」は、生乳のほかに、脱脂乳、粉乳、濃縮乳、無塩バター、クリームなど「乳成分以外の成分を含まない乳製品」を原料として使った一種の加工食品です。加工乳を作るには、通常は、粉乳や脱脂乳に水を加え、あるいは脱脂粉乳と無塩バターに水を加えて混合・溶解して、生乳と同じ固形物組成に戻した「還元乳」を作り、それを生乳と混合します。その時に、バターやクリームを増やすと、味がよくて栄養価の高い「濃厚」な加工乳が出来、また脂肪分を少なくすると「低脂肪」「ローファット」な加工乳ということになります。
なぜ生乳からいったん乳製品を作って再び元の組成に戻すという面倒なことをするかと言えば、粉乳などの形ならば長期に保存したり長距離を運送したりしても平気なので、最初は特に夏から秋にかけて生乳が不足する時期にやむをえず原料を補うために使われたようですが、そのうちに「ビタミン・ミネラル添加」(昭和30年代に大流行して牛乳消費を上回ったが、乳製品以外の混入が禁じられたので、加工乳から「乳飲料」に格下げされた)、「濃厚」だ「低脂肪」だと、それをむしろ売り物にした恒常的な商品を作るようになって、大いに普及しました。斎藤記者が「牛乳として市販されるものの大半が加工乳」としているのはやや不正確で、平成10年で「飲用牛乳」全体の生産量が479万2512キロリットル、そのうち生乳だけの「牛乳」が8割強の399万5644キロリットル、加工乳が99万6868キロリットルです。
それにしても、牛乳と加工乳の区別も知らない消費者に、加工乳も牛乳の一種、あるいは加工乳は牛乳よりもっとマシなものと思い込ませて買わせていた雪印に限らずメーカーの姿勢が何より問題で、その作り方がずさんで危険だったというのはむしろ副次的な問題にすぎないのではないでしょうか。しかし、企業はしょせんは利益追求が目的。牛乳って何だと少しでも疑問を持って勉強することもしないで、スーパーの棚のすぐ向こうはもう誰が何を使ってどう作っているのかもわからないブラックボックスになっているにもかかわらず、大量生産・大量流通・大量消費の巨大システムに安心して命を預けている消費者のほうが、やはり無謀だということです。
さて、では生乳なら大丈夫なのかというと、そうではないのです。やはり大量生産・大量流通・大量消費の効率を上げるための殺菌方法が大問題。それについてはまた次回に。▲