「1年ほど前に飛騨の高山に住居を移しました。マネジャーを兼ねる女房も乗り気で、今は畑を耕しています。こんな生活ならたとえ仕事が途絶えても、月々10万円で足りると2人で話し合ったりもしました。
この10万円という金額には実はこだわりがあります。仙台の親元を離れて東京で学生をしていた昭和28年ごろ、日給180円ほどのアルバイトを何とか見つけては生活費を稼ぐ日々でした。そのうち大学に通わなくなり、20歳そこそこの浅利慶太さんが率いる劇団四季に入ったのですが、出演料はゼロ。貧乏暮らしの中でよく頭に浮かんだのが、10万円でした。そんな大金を一生n一度は手にしてみたいと思っていました。
お金に余裕ができたのは東映に入って4、5本の映画の主役に選ばれてからです。昭和48年に主演した『仁義なき戦い』では、ギャラは200万円くらいになりました。今は必要なときに女房殿から小遣いをもらっています。10万円単位で欲しいと頼むのです。お金を受け取るときには、夢の10万円がひとつかみ10万円になったとふと考えたりします。
しかし、物質的な豊かさを求めていてはきりがない。『仁義なき戦い』のころからのギアをトップに入れたまま走るような生活が、何だか無味乾燥に感じるようになりました。そういうわけで始めた今の生活。人の波と騒音のない所で、マイペースで過ごしています」
●「長狭米」を食べたら他の米が食えない、と村田&蓮舫!
村田信之(ライター/インサイダー同人)&蓮舫(TVキャスター)夫妻から通信あり。
「鴨川の米を食べるようになって、ほかの産地の美味米が食べられなくなりました。鴨川のは、水を含ませた瞬間にヌカがグワッという勢いで飛び出してき、通常よりも倍近い水の量をつかって研いでいます。その美味いことといったら、2歳の子供たちもおかずは食べずにごはんだけ食べる、という躾けにいいのか悪いのか、まったくわからんちんの状態です」
▲鴨川の米とは、鴨川自然王国の田中三示さんが作ってこの7月から希望者に限定頒布している低農薬・無農薬のコシヒカリのこと。鴨川市の山あいの長狭街道沿いで作る米は「長狭米」と呼ばれて、昔から献上米を出し、また東京方面の寿司屋さんにもてはやされるなど、おいしいので有名ですが、その中でも、われわれが行く大山地区の棚田で獲れるコシヒカリは特においしいです。ほかの方からも「今まで息子は、おかずだけ食べて最後にごはんに味噌汁をかけて掻き込んでいたのに、このお米にしたら初めてちゃんとごはんを食べるようになった」というお話がありました。子供は米の違いを食べ分ける感受性を持っているのに、大人が米の味と質について余りに無頓着だったということです。このごろの子供は米を食べないと言いますが、食べたくなるような米を与えていないというのが本当でしょう。
平成7年、新しく農業を始めた人は全国で10万2000人。そのうち60才以上の人は5万9800人と約6割が定年退職者の就農で占められています。その数は年々増加しており、「定年帰農」現象と言われます。そして、「団塊の世代」の定年まであと10年余り。またリストラや不況などで今後ますます中高年の新規就農者は増加するものと思われます。そこで、自然に親しみ土に触れて生きたいとお考えの方におすすめの本を探してみました。
《農文協の本》
▼寺田瑛子『いなかに移り住むということ』(1733円)――大磯から大井川沿いの農村へ転職・Iターンした熟年夫婦と村の人々とのユーモラスな出会い。
▼小松恒夫『百姓入門記』(1173円)――元「週刊朝日」編集長が150坪の畑の百姓になった記録。日本エッセイストクラブ賞受賞。
▼岡田幸夫『エンジニア百姓事始』(1470円)――大手半導体メーカーで技術部門の管理職を務める著者のもう1つの顔は「朝飯前」百姓。作業の80%は早朝の出勤前にこなし、約500坪の畑で年間40種類の野菜を無農薬で育てる。その春夏秋冬の菜園とのつきあいの秘訣とは−。野菜づくりのワンポイント図表付。
▼丸杉孝之助『シルバー農園のすすめ』(1275円)――定年後から庭先と借地で野菜と果樹つくりを始めた著者が、土地の借り方から栽培の実際を紹介。
▼水口文夫『60才からの小力野菜つくり』(1890円)――残さ活用、根まわり堆肥、機械移植、溝底施肥
など、体に無理かけず高品質野菜を穫るアイデア。
▼高松求『60才からの水田作業便利帳』(1427円)――あなたの作業をラクにする小力アイデア満載。むりをせずに楽しく営農。ベテラン農家による体力に合わせた機械選びと使い方、周辺器具情報。
▼井上雅央ほか『60才からの防除作業便利帳』(1680円)――防除は薬の力だけではない!竿振り、器具、圃場設計も含めた総合力で勝負の新3K防除。効率・快適・健康の新3Kで防
除が変わる。
▼井原豊『ここまで知らなきゃ農家は損する』(1427円)――農家が書いた機械屋、肥料屋、農協泣かせの本。農家が損する場面を徹底的に点検する。
▼農業情報Gメン『ここまで知らなきゃ情報で損する』(1470円)――情報に振り回されるか使いこなすか。メーカー、市場、農協、試験場などの情報を総点検する。
▼デビィッド&ミッキ・コルファックス『楽園のつらい日』(3470円)――元大学助教授の6家族が水も電気もない山中でヤギを飼って生きる。子供たちは日々の労働の中でものを考えることを学び、学校には行かず自分の家で勉強する。
▼原田津『むらの原理・都市の原理』(1470円)―― むらと都市の原理的差異と棲み分けの論理を追求。
▼伊藤昌治『農村生活カタログ』(1365円)―― 学校生活・年中行事などを230の道具や事物から浮き彫りにする。
▼高橋九一『むらの生活史』(1631円)――古老の話から明治―昭和とむらの姿をたどり、近
代文明によって失ったものの大きさにきづく。
《農文協『現代農業』増刊号シリーズ》
▼『自給ルネッサンス』(1999年5月増刊)――21世紀は自給と相互扶助の社会化の時代。自然と人間が共生する「森の民の暮らし」=縄文文化と、自給・自発・相互扶助の「暮らしのネットワーク」=江戸文化こそ21世紀に引き継ごう!「カネの時代」から「人の生き方・コミュニティの時代」の展望を拓く。
▼『帰農時代』(1999年2月増刊 )――むらの元気で「不況」を超える。定年帰農と女性が輝く直売所が農の底力を発揮、高齢者助け合いの会に、若者の仕事の場に。農的暮らしと自給の力で日本が変る。
▼『田園就職』(1998年11月増刊 )――これからは田舎の仕事がおもしろい、自然と人間の調和をめざして自己実現。これから就職を考えている若者が読んで、農山漁村で働きたくなる、仕事を起してみたくなる、また、都会に出ているわが子や親戚の子に「これを読んで帰って来い」と読ませたくなる。都会で得た職歴・技能を農山漁村で活かしたい中途退職者、定年帰農者も希望をもてる。
▼『田園住宅』(1998年8月増刊)――建てる、借りる、通う、住まう。定年帰農・農都両住・週末農業・自給自足の夢をかなえる家・施設。借りてよし、定住もよし。世の中どう変わろうと、農のある暮らしは強く、楽しく、美しい。廃校、空き家、茅葺き古民家再生活用の事例と方法も満載。
▼『定年帰農』(1998年2月増刊)――6万人の人生二毛作。生まれ育ったふるさとで、産直や週末農園で知ったあこがれの地で、「農のある暮らし」を実現した人びとの手記やルポ。定年帰農を呼びかける自治体、高齢者に無理ない「小力農法」、就農準備校や相談窓口の情報も。
《他社の本》
▼シニアプ ラン開発機構編『サラリーマンシニアの現代田舎暮らし』(ミネルヴァ書房、2000円)――山村で暮らすセカンドライフのすすめと、田舎暮らしを始めるまでの準備、一年間の生活を語る。
▼星野晃一『定年後は田舎暮らしを愉しみなさい』(明日香出版社、1400円)――田舎暮らしの一年間、自家農園の愉しみ、田舎暮らしのスタイルと立地選び、田舎暮らしの経済、田舎暮らしを愉しむ知恵を解説。
▼坂根修『脱サラ百姓のための過疎地入門』(清水弘文堂、1200円)――なぜ過疎地が注目されるかを体験談と共に解説。
▼吉津耕一『田舎で仕事/失敗しない選び方』(ハート出版、1600円)――田舎で働くメリットや田舎で仕事や農業を始めるためのポイントを解説。
▼吉津耕一『田舎売ります』(ダイヤモンド社、1500円)―― 著者が田舎の不動産を紹介した記録を紹介し、田舎の構造、手作りリゾート構想にまで言及する。
▼富民協会ほか『農業に飛び込む人々』(富民協会・朝日新聞社、1050円)――「農業と経済」
臨時増刊号。新規参入状況、ホスト地域受入状況を解説。
▼天間征『新しい職業としての農業』(酪農総合研究所、1500円)――参入者の実態と支援体。制、経験談を紹介。
▼吉田典生『農業で独立する方法がわかる本』(メトロポリタン出版、1500円)――新しいタイプの新規参入者、就農のための基礎知識、就農へのアクションプラン、作物別就農プラン、就農データバンクを紹介。
▼全国新規就農ガイドセンター監『新規就農ガイドブック』(全国農業会議所、1400円)――新規就農までの道すじ、体験談、作物別経営内容、受入体制のある市町村を紹介。
▼全国農村青少年教育振興会編『大地の輝く風〜農に魅せられた人たち』(同、1530円)――Uターン就農者の事例73、新規参入者の事例49、国・各都道府県等の「就農支援内容」を紹介。
▼筧次郎・白土陽子『百姓入門/奪ワズ汚サズ争ワズ』(邯鄲アートサービス、2100円)――自給自足の暮らし、百姓暮らしの実際を語る。
▼やまざきようこ『わたし、牧場を始めます!』(中公文庫、760円)――都会暮らしを捨て牧場経営を始めた著者のエッセイ集。