農と言える日本・通信 No.7 1999-09-09        高野 孟



《報告》
●十勝8月大集合に十数名が参加!
 帯広「リバティ・ファーム」大集合は、8月26日〜9月1日の期間に、最長の人で6泊、最短の人で土日のみの1泊と、都合により様々でしたが、東京・札幌・旭川から十数名が参加し、にぎやかに行われました。

 27〜28日は、リバティ・ファームから約50キロの太平洋に面した海岸の高山性植物の原生花園一帯に馬3頭を運び、海の見える公営温泉「道成温泉」に泊まって2日間にわたり初心者は乗馬教室、経験者は海岸や森の中のトレッキングをたっぷり楽しみました。

 29〜30日はリバティ・ファームのわれわれのログハウスに泊まって、内部やトイレの大掃除、備品の整備、周辺の廃屋の解体・焼却などの作業に取り組む合間に、林間で乗馬、川岸のサウナなど牧場遊びをしました。また隣の広洋牧場の和田さんから大きなナラの古材を頂いて、横浜から参加の木工家=馬場さんにプロの技の一端を披露して頂いて、立派な「酒卓」を作ってログハウスの広間に据えました。部屋全体の中心が出来た感じで、とてもよくなりました。

 出資会員のみなさんは、秋のうちにでも是非泊まりに行って下さい。すっかり見違えるように改修成った小屋の様子は、近く高野ホームページ内の「十勝自然王国」に掲載します。

 またリバティ・ファームの主である平林さんのレストラン「ランチョ・エルパソ」(現在改修中で11月完成予定)や手作りハム・ソーセージおよび地ビールの通販、インターネットによる自分流の「自ビール」注文生産システムである「びあゴッコ」、それにリバティ・ファームの概要などについては、「食卓の達人」http://city.hokkai.or.jp/~juns/をご覧下さい。



《消息》
●リスポンスその他

◆前号で菅原文太さんの「飛騨の山奥なら月々10万円で足りる」との記事を紹介した際、在日コリアンの老人ホーム建設に私財を投じて」と書いたところ、私たちは私財は投じていません、協賛金集めに協力しただけですとの趣旨のご指摘がありました。お詫びして訂正します。

◆障害者・高齢者の旅行企画に携わっている篠塚恭一さんよりお便り。「文太さんの記事は私も読みまして、共鳴するところが多くありました。私は千葉で海と田畑をやる家系に育ちましたので、高校生にもなって魚もとれない米も作れない自分には反省するところ大でした。そう思いつつも行動にさしたる変化が伴ったわけではなく、平和ボケした生活をおくっていました。そんな自分が、3年の時に突然田んぼに入りたいと云ったので、頼まれた親戚は嬉しくもあり、また不思議に思った様です。結局にわか農民の私など何の役にもたたなかった訳ですが、私の両足には今もあの時の指の間から“ヌルッ”とした泥が上がっている感触が懐かしく残っています。自然王国の空気が好きなのは、そんな遠い記憶からかも知れません。」(以下略)

◆篠塚さんと一緒に鴨川に来たことのある馬場滋さんよりお便り。「あれからも、何度もご案内をいただいているのですが何より子供達がまだ小学生で『日曜日ぐらい子供達の面倒を見ろ』(土曜日もほとんど会社に行っているものですから……)というかみさんの意見に逆らえず、なかなか鴨川に伺えないというのが実状です。もう少し、子供達が大きくなったら一緒に連れて行きたいと思っています。」(以下略)
▲前々から鴨川に参加したいと言っている私の知人は、「鴨川に田んぼの草取りに行く」と言ったら、「あなた、よその家の草取りをするくらいなら自分の家の草取りをしなさい」と言われて断念したそうです。かみさんというのはおおむね現実的ですからねえ。

◆声楽家でテノールの第一人者の小林一男さんからお便り。「僕の好きなテーマの通信でとても楽しく読ませていただきました。この際ですから少し自分のことを。小林一男、49.07.15.生まれの満50才。生まれは山梨県大月市初狩町、山国生まれの山国育ち、実家は「大工」職人の家。狭い山と山の間で畑を耕し、野菜を作って.山、川で遊んで育つ。大学生になるまで海を知らなかった。今になって思う事は、あの頃のあの狭い生活環境がなんと奥深くバラエティーに富んでいた事だろうか。自然回帰というか、僕にとってはただの懐かしい故郷の山に帰るだけのことではあるが、7〜8年前に小淵沢に小さな山小屋を建てた。最初から海は向かずに山に建てス。運輸省の航海練習船「日本丸」「海王丸」の船長を25年間続けた父を持つ東京・大森出身の女房には最初理解できなかったようである。そんな女房の父も聞いてみれば、宮城の山奥の出身だったとか....。もともと大工の息子だから、そんなに帰農願望は無い。が、野菜ぐらいは作ってみようかとも思っている。」(以下略)
▲小林さんとはモンゴル・オペラ鑑賞ツァーでご一緒し、先日はまたエイズ支援のチャリティ・コンサートに出演した私ら「元美少年合唱団」の歌唱指導をして頂きました。ウランバートル郊外テレルジのゲル村に一泊した日が小林さんの50歳の誕生日で、一同45人に同宿のオランダ人グループや現地の方々まで加わって盛大な誕生祝いをしました。10月18日に小林さんの歌を聞きながらワインを楽しむ集いがあります。切符がまだあるかどうか分かりませんが、希望者は須藤さん(s.sudo@pia.co.jp)にお問い合わせを。

◆鴨川自然王国の一角で「ツリーハウス村」の建設を推進している(株)ガンコ山の平賀義規さんが「新ガンコ山通信」を出しています。9月1日号には、鴨川常連のキムテツこと木村哲治さんの「大山不動尊大礼祭」おみこしワッショイ体験記が載っています。購読希望は045-582-0072平賀さんまで。

◆高野の新著『最新・世界地図の読み方』(講談社現代新書)が8月20日発売となりました。私のご近所の飲み仲間で長狭米の愛好者でもある作家・スポーツ評論家=玉木正之さんの『スポーツとは何か』も同日、同新書から発売です。あわせてよろしくお願いします。

◆関連で、電子マガジン「Navigator」編集人の川口晋さんより。「『最新世界地図の読み方』を買いました。1/5ほど残していて全部読んでいませんが、最初の地図の説明を面白く読みました。ところで、ご存じかもしれませんが、マック用のシェアウエアでPlanetEarthというものがあります。これはとても面白い。軸を変えて、たとえば北極とかを手前に向けて見る(つまり地球儀だと上からのぞき見るかたち)こともできたりする優れものです。比較的軽いのでデジタル64で2〜3分でダウンロードできます。
http://hotfiles.zdnet.com/cgi-bin/texis/swlib/mac/getit.bin?fcode=MC17707

◆自治労から連合に出向している高橋公さんより、連合社会政策局が取り組みを始めようとしている「100万人の故郷回帰運動」の素案が届きました。私も「中高年リストラなんて恐くない、農業をやろう、農業人口を10%まで回復しよう」と言って歩いているので、大いに共感します。以下、別項で紹介します。



《資料》
●連合社会政策局の「100万人の故郷回帰運動(案)の考え方について」

 連合は「1999年〜2000年の政策・制度要求と提言」の「食料・農林水産政策」の中に、本年から新たにUターン、Iターン、退職者など、地方で暮らし、生活したい人のために、受け入れ体制や技術指導など基盤を整備し、地域活性化の切り札として「自然豊かな地方で暮らそう『100万人の故郷回帰運動』」を検討することとした。

 これは、我が国の国土の発展に不均衡が生じ、地域によっては過疎化・高齢化が急速に進み、今後その傾向はより加速することが懸念される一方で、近年、都市生活者の中に地方で暮らしたいと希望する人が数多く存在することから提起したものである。連合としては、この運動を中山間地を初めとした地域の活性化と国土の均衡ある発展をめざすとともに、多くの勤労国民が従来の価値観を見直し、自然豊かな地方で暮らしたい人は暮らすことのできるネットワークづくりに取り組みたい。その概要は次のとおりである。

(1)対象者
 定年退職者・Uターン・Iターンなど都市生活者を中心に100万人をメドに考える。

(2)推進体制
 100万人の故郷回帰運動推進実行委員会を設立して、シンポジウムや現場視察などキャンペーン活動を行う。また、実行委員会から情報・交流誌を出して入植者を求めている地域や入植者の成功例・失敗例などの事例紹介なども行う。

(3)基本的計画
 北は北海道から南は沖縄まで、全国の遊休地・休耕地、漁村の漁業権や漁船、山村の手入れの必要な森林などのデータを各分野ごとにインターネットに入力し、希望者には誰でもアクセスできるシステムを構築する。そして、条件が合えばそこで働き、暮らすことができることとする。コーディネートは実行委員会が行う。
 なお、必要に応じて分野ごと、地域ごとの訓練システムや支援システムを自治労、農協、地方連合会で作ることとする。
 また、国(農水省の就農支援基金)や地方自治体の支援体制の拡充も要求していくこととする。

(4)具体的内容
 1)全国47都道府県3300自治体の遊休農地・森林・漁船や住宅なヌのリストを実行委員会参加組織の協力で作成する。
 2)そのデータをパソコンに入力し、どこからでもアクセスできるようにする。
 3)年2回そのデータのフレッシュアップを行う。
 4)地方でのバックアップシステムを農協、地方連合会、自治労の協力のもとに作る。
 5)運動の推進に向けてシンポジウムや集会などを開催する。
 6)年4回の会報を出版し、故郷紹介、回帰者の成功・失敗例の紹介などを行う。

(5)実施時期
 2000年4月をメドにスタートする。

(6)実行委員会体制
 連合、農協中央会、農業会議所、森林協同組合、漁業共同組合など。

(7)後援
 農水省、自治省、地方6団体。              ▲



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