早稲田大学 大隈塾
早稲田大学・大隈塾は、先々代の奥島孝康総長と田原総一朗氏が意気投合
して2002年4月、同大学オープン教育センター翼下の全学部学生対象の授業「21世紀日本の構想」としてスタートした。田原氏が塾長、私と岸井成格=現
毎日新聞主筆が補佐を務め、毎回各界のリーダーを講師に呼んで小一時間ほどの講義のあと学生たちと討論してもらう形式の授業は、たちまち評判となり、
200人の定員に対し毎年4〜500人の応募者が押しかけるほどの人気授業となった。翌年から、その履修者の中から希望者を募って高野ゼミ「インテリジェ
ンスの技法」、岸井ゼミ「ジャーナリストの心構えと実践」が始まり、さらに翌々年からは企業・官庁からの派遣を中心に50人ほどを集めた「社会人ゼミ」も
始まった。社会人ゼミは現在は、商学研究科の寄付講座「リーダーシップ論」となり、専ら田原氏が担当している。
★オープン教育センター「大隈塾」:http://open-waseda.jp/gakubu/syllabus/list.php?key=01&file=1
★商学研究科「リーダーシップ論」:http://www.w-int.jp/education/okumajuku/index.html
高野ゼミでは、インフォメーションをインテリジェンスに昇華する方法論を身につけることを主眼に、論理力、想像力、直覚力を鍛える練習をする。論理力で
は、物事をダイナミックに捉える弁証法的論理力が必要だということで、毛沢東『矛盾論』をテキストにしているが、毛沢東も中国革命も知らない今時の学生に
はちんぷんかんぷんのようで、付いて来られるのは毎年半分くらいである。それにしても驚いたのは、我々の頃には必須の教養だった『実践論・矛盾論』は今で
は岩波文庫も新日本文庫も絶版で、仕方がないので私が手元の本からOCRで起こしてウェブからダウンロードさせて読ませている。こんなものを若い人に読ま
せようとする私が時代遅れなのかとも思うが、数年前の『ハーバード・ビジネス・レビュー』でも「弁証法的思考法」の特集をやっていたくらいだから、やはり
絶版にする出版社の方がおかしいのだろう。なお、ゼミでやっていることの一端は、本サイト内の「ジャーナリスト入門基礎講座」でも覗うことができる。ま、
いつまで続くか分からない大隈塾だが、子よりも孫に近い若者たちと週に一度、議論したり酒を飲んだりするのは楽しいので、やれる限りはやっていくつもりで
ある。(2010年8月記)