東京万華鏡主幹:高野孟(たかの・はじめ)

(株)インサイダー代表取締役兼編集長
『サンデー・プロジェクト』(日曜日10時〜)
『朝まで生テレビ』(毎月最終金曜日25時〜)
著書:『最新・世界地図の読み方』


『東京万華鏡/Tokyo Kaleido Scoop』...
94年10月に日本でたぶん最初のインディペンデントなインターネット上の時事週刊誌として誕生した。

インターネットの一般利用が日本でもようやく解禁されたばかりで、アカデミズムの世界を除くとまだ個人でプロバイダーと契約してアドレスを持っている人は今では想像もつかないほど少なかったし、また持っている人も専ら世界のウェブ発信源を見て回って喜んでいて、自分のほうから何事かを発信する人はほとんどいなかった。
その頃、われわれはずいぶん議論をして、
「インターネットの本質は、どんな1個人でもいきなり世界に向かって発信できることにある」という考え方に立って、世界有数の情報集積都市=東京を拠点に仕事をするジャーナリストの心意気として、東京発で世界に通用する英語のニュースと分析を繰り出そうではないか、ということになった。

ちょうどその時期、私と『インサイダー』集団は、名古屋の東海テレビで毎週1時間の情報トークのナマ番組をやっていて、そのゲストとして、前の年にNHK会長の座を追われた故・島桂次氏に登場して頂いた。土曜日の午前中に東京タワー近くのスタジオから放送して、それが終わるとキャスターの私と蓮舫、それに主な番組スタッフが出演者の皆さんと一緒に麻布十番の蕎麦屋で昼食をしながら懇談するならわしになっていて、その折に島さんがこんなことを言った。「NHKを辞めたことに未練はないが、1つだけ、GNN(グローバル・ニュース・ネットワーク)の構想がいいところまで煮詰まりかけていたのに、(自分がいなくなって)立ち消えになったのが残念で仕方がない」

GNNは、湾岸戦争報道のあとCNNが全盛となって世界のテレビニュースを席巻しているような状況の中で、それに対抗して、日本・アジアはNHK、欧州は英BBC、アメリカはABC(だったか)の3極で1日8時間ずつを担当して、アメリカ一辺倒でない世界ニュースを放送しようという計画で、島さんが駆け回って8合目あたりまで交渉が進み、それにメディア王=マードックなども大いに関心を持って接近してきていた。ところが(ご本人に言わせると旧竹下派=郵政族の陰謀で)会長の座を追い出されて、次に会長になったのは芸能とドラマくらいしか分からない人物だったので、それでお終いになってしまった。
われわれは島さんにこう言った。「ポストも組織も失った島さんが、日本から世界に向かって発信しようとすれば、これからはインターネットしかありませんよ」

それで、島さんが資金集めを担当し、われわれがコンテンツを担当するということで
『(株)島メディアネットワーク』を94年6月に設立して赤坂に事務所を構え、サーバ管理やホームページづくりなど技術面は、島さんと何やら縁があるという日本のインターネットの先駆者というか伝道師の伊藤穣一が担当して、その年10月に スタートしたのである。

内容面では、岩見隆夫さん(毎日新聞特別顧問)・石川好さん(作家)・田原総一朗さん(キャスター)はじめたくさんの方々が無償協力してくれて、なかなか強力なラインナップが出来た。
年が明けて阪神大震災が起きて、世界中の注目と関心を集めたが、インターネット上で日々の状況を英語で発信し続けたのは、関西の2〜3の大学とNTT、それに東京万華鏡だけだったこともあって、それをきっかけに爆発的にアクセスが増え、さらに続けてオウム真理教の地下鉄サリン事件でも同じことが起きて一挙に軌道に乗った。
スタートから1年を過ぎた頃には、
月間のアクセスが100万ヒットを超えるようになった。

購読は無料・費用はバナー広告でまかなうという方針で、主として島さんが10社ほどの大企業から当初3年契約で資金集めをしてくれた。ところが、その契約更新をしなければならない時期に、島さんが急逝したために思うにまかせないことになり、それでもわれわれが他のインターネットがらみの仕事で稼いで支えていたもの の、次第に力尽きて、最低限の更新さえ出来なくなって一時は“仮死状態”になってしまった。
その頃に、いつまでも亡くなった島さんの名前を冠しておくのもかえって失礼だろうということで
『(株)ウェブキャスター』と社名変更した。

しかし、21世紀に入って、やっぱりこのままではまずい、もう1度、ニュース発信を再興しようじゃないかということになり、新しいスタッフも迎え、いま徐々に態勢を整えつつあるところである。
協力者のみなさんだけでなく読者のみなさんも「こういうメディアが1つくらい日本にあってもいいじゃないか」という気持ちになって頂いて、われわれと一緒にこれを育てて頂くよう心からお願いする。

[編集部より]

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