チェルノブイリ報告


<希望21> [ベラルーシ・ミンスク]

 「希望21」は、チェルノブイリ原発事故により被災したベラルーシの子どもたちを援助するために、ベラルーシとドイツにより1992年に設立されました。日本のチェルノブイリ子ども基金からは、多大な援助と支持を得ています。

 1994年9月5日ミンスクの北80kmの湖岸にサナトリウムを開設し、ゴメリ州とモギリョフ州に住む60人の子どもたちを初めて受け入れました。1999年1月からは、一度に205人が交代で保養をしています。1994年9月から2001年12月までの間に保養したのは総勢11880人です。受け入れ対象としているのは1平方キロあたり5キュリー以上の放射能で汚染されている地域に住んでいる子どもたちです。

 きれいな環境と高品質でバランスのとれた食事と同時に、医師・教育者たちとの連携による社会心理学的リハビリも健康回復の基礎になっています。教師、社会教育者、医師、心理学者、その他の専門家たちは、子どもの自発性を尊重し活かすことに努めています。

 日本のチェルノブイリ子ども基金との出会いのおかげで、子どもたちは日本の歴史と文化に触れ、日本の文化的伝統を知るという、良い環境条件になりました。

 チェルノブイリ原発事故で被災した児童と青少年の健康状態については、事故後すぐに発病率が全体として増加し、多くの子どもが病気にかかっているということを物語っています。発病率のピークは1993年に記録されており、その後は1996年から1998年の間です。

 ベラルーシ共和国全体によるデータと比較すれば、被災した子どもたちの発病は高い比率で記録され続けています。例えば、腫瘍、消化器官の病気、内分泌系、神経系、感覚器官、血液と造血器官に関係する病気です。具体的には、甲状腺の病気、特にその中で甲状線種、甲状腺炎、後天性甲状腺機能低下が際立っています。

 現在発病率の第1位は呼吸器の病気、第2位は消化器、第3位は神経系と感覚器、その後は皮膚病と皮膚組織の病気、血液と造血器官の病気、内分泌系の病気、栄養障害、新陳代謝と免疫力の障害、と続きます。慢性病では、消化器官の病気最も増加しています。精密な検査をしていくと、一人の子どもが複数の病気を抱えていることがあります。

 子どもたちの街であるところの「希望」は存続できていますが、まだ多くの問題が起きています。ベラルーシ共和国の社会的・経済的状況に私たちの活動は大きく左右されます。チェルノブイリの悲劇の克服は、ベラルーシ共和国にとって今もなお重い負担がのしかかったままの状態です。

★子ども基金のコメント★

 子ども基金はサナトリウムの設立当初から協力してきました。夏期に行う「甲状腺手術後の特別保養」プロジェクト期間には「日本週間」と称して、ボランティアを派遣しさまざまな教室を開き子どもたちの精神的リハビリに役立ってきました。また、年間の保養費の一部支援、医療棟へ医療機器や医薬品の寄贈、音楽・コンピュータ・陶芸教室などへの支援もしています。アクサコブシナと協力して行う遠隔地に住む子どもたちへの検診なども支援しています。「希望21」の詳しい活動についてはニュースNo46のマクシンスキー氏の報告をご参照ください。

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