ミンスク便り



■夏が終わり、また休暇から人が街に戻り、学校では新学期が始まりました。この時期は親に付き添われて登校する新一年生たちの姿が頻繁に見られます。こちらの学校は1〜11年次までが一つの学校に通う一貫教育が普通で、9年次までの普通教育が義務となっています。小学校入学は満6歳ですが、誕生日が7,8月の場合や、親がまだ早いと考えた場合、希望すれば一年遅らすこともできるようです。6歳入学は子どもへの負担が大きく、早すぎるという意見もあり、小学校1年生は幼稚園の続きという位置づけで、幼稚園内で準備授業を行ったり、またそれを「0年生」と称する学校もあり、学校によってまちまちなので外から見るとなかなか複雑です。以前見学したミンスク郊外の町にある学校では、1年生の教室は幼稚園と同じように昼寝用にベッドが出せるようになっており、ベラルーシでこのような学校は他にないということでした。また、別の学校では、低学年の子どもたちが放課後も教室に残り、先生と一緒に宿題をしていました。帰宅しても両親が不在の過程では、こうして子どもたちが学校に残って面倒をみてもらえるのだそうです。日本でも学童保育などありますが、なかなかいい制度だと思います。また、公立の音楽学校や美術学校、スポーツ学校などがあり、普通学校の代わりにこうした専門的な学校に通う他、普通学校に通いながら習い事としてこうした学校で学ぶこともでき、かなり恵まれた環境だと思います。

■最終学年となる11年次では、その先の進路を決めなければなりません。大学入試は、卒業式を終えてから夏休みの間に実施されますが、その制度も最近は変わってきているようです。これまでの口頭試問・論文に加え、より客観的な評価を可能にする目的でマークシート式の「統一テスト」が導入されたのもその一例です。少子化が進んでいるにも関わらず、大学入試はここ数年、競争が激化しており、制度改革についての議論も盛んです。ソ連時代は高等教育も無償で受けることができましたが、今や同じ学科で勉強する学生の間にも、授業料を免除され、奨学金を受けている学生と、授業料を払っている学生がいます。入試での成績がよければ授業料を免除されるため、同じ学歴でも、無償枠で学んだというのがより評価されることになります。ベラルーシでは分かりませんが、ロシアでは、卒業証書を売るビジネスが横行しており、かなりの金額を払ってでも無償枠の卒業証書を買おうという需要があるのだそうです。今やインターネットで簡単に「本物の」卒業証書が注文できるとのことです。また大学卒業時には、国が就職先を指定するのも大きな特徴です。これはソ連時代からの制度で、国が面倒をみてくれるという利点もあり、好きに就職先を選べないという不自由さもあります。さらに最近、授業料免除で大学を出た場合、最低2年間は国の指定した職場で働き、もしこれに背くなら、授業料を返済することが義務化されました。

■こうした当局による束縛や生活水準の低さを嫌い、若者の多くは国外に出る機会を窺っています。一定の参加料をエージェントに払ってアメリカなど国外での住居・職を斡旋してもらう制度は、夏休みのアルバイトとして学生に人気がありますが、休みが終わっても帰って来ない学生が除籍処分になるケースも発生しています。こうした状況もあり、期間の長短を問わず、学生が国外へ出るには、教育省の許可をとることがこれも最近義務づけられました。許可なしで出国した場合、帰国しても大学を除籍になるというのです。これは保養に行く子どもたちについても同様で、やはり教育省の許可が必要になりました。こうした措置は決して出国を制限するものではなく、人身売買などの危険から国民を守ることが目的であるとされてはいますが、留学生関連の仕事をする上でも何かと煩わしいことの増えた今日この頃です。

(花田朋子 ミンスク在住 日本大使館勤務)


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