チェルノブイリ20周年救援コンサート in くまの 実行委員 二河螢子
■コンサートの日から2週間近く経とうというのに、今なおその日の興奮と感動の余韻が嫋々(じょうじょう)として残る。直前までの2つの台風接近の心配も、見事に拂拭されたような美晴に恵まれ、3連休の中日というのに1時からの開場に正午前には列ができはじめ、文字どおり長蛇の列。約千人収容の会場が、瞬くまに埋めつくされる。人口3万数千人の地方都市にとって、この種の催しでは異例ではなかろうか。
オープニングは、高い評価を得ている地元高校生による吹奏楽。ステージに溢れんばかりの40人、その若さと力強い八木節の演奏で幕開け、会場を盛りあげる。続いて実行委員長のあいさつ。20年を経ても今なお食物等による体内被曝に苦しみながら、その地に生き続けなければならない多くの人たちがいること、それは決して遠いウクライナだけの問題ではなく、いつ自分達もその苦しみを味わなければならないか決して無関心でいられる問題でないと、核の脅威を訴える。
地元にいて、絶えず環境問題や社会問題を歌に託して訴えるフォークグループ4人“わがらーず”は(私たちの意味の方言)、メンバーの一人の作詩作曲になる“誓いの大地チェルノブイリ”も歌われる。次に地元出身でウィーン、ザルツブルグで研鑚をつまれた、森岡薫さんのピアノ演奏モーツアルト、シューベルトの5曲。さすがに流れるような柔らかいタッチにプロの高い技を感じる。それら地元関係の人達の心からの協讃を得て、続くオクサーナさんのバンドゥーラの演奏。初めて見る63弦もある民族楽器の音の素晴らしさ。見事な刺しゅうのほどこされた民族衣装、素晴らしいコバルトブルーのロングドレスに着替えてのオペラのアリア。いったい躯のどこから発せられるのか。初めて聞く、コロラトゥーラソプラノに1000人近い会場は、水を打ったような静けさ。満場の拍手鳴りやまず、大きな感動に包まれる。最後の高校吹奏楽部との共演“千の風になって”と、聴衆も共に歌った“故郷”に、胸がいっぱい、涙がこぼれてきた、と口々に話しながら帰路につかれた方々が多勢いた。