ミンスク便り


今年は例年より冬の訪れが早く、11月上旬からベラルーシは冬の景色になりました。気温が下がり、日照時間も短くなるにつれ、風邪やインフルエンザの季節もやってきます。

日本食が世界で注目されるなど、長寿大国であり、また近年は、健康ブームが時として行き過ぎていると思われるほどの日本ですが、ベラルーシでも、これにはまだまだ及ばないものの、健康に対する関心は高まっています。TV番組やインターネットを通じた情報の氾濫する日本に比べ、食品や健康についての知識は乏しい印象ですが、それでも厳しく長い冬の寒さを乗り切るための伝統的な知恵は、食習慣など生活のさまざまな面で、ベラルーシ人の間に受け継がれています。今回は、ベラルーシ人の健康法について、これまでに気がついたこと、感じたことなどをご紹介します。

まず、ベラルーシの人々にとって、外の空気に触れることは重要です。冬でも時々は窓を開け、室内の換気をすることが励行され、多少風邪気味でも、家に籠っているばかりでなく、少し家の周りでも歩いて新鮮な空気を吸うのがよいとされます。これはお年寄りや赤ちゃんでも同様で、アパートの前でベンチに腰掛けたり、歩き回っているお年寄りや、氷点下の気温の中、ベビーカーで散歩しているのをよく目にします。但し、外に出ているのは赤ちゃんの顔だけで、他は完全防備です。顔だけでも冷たい空気に触れることは、寒さに対する抵抗力をつけるために必要なことだと言います。そして、重要なのは頭で、髪の少ない赤ちゃんや子供についてはもちろん、大人であっても、真冬に帽子をかぶらずにいると、見知らぬ人からも注意されかねません。以前、冬に寝台列車で旅行した際、頭が冷えるから足を窓際に向けて寝るよう、注意されたことがありました。日本では「頭寒足熱」ですが、気温が極端に低い場合、重要なのは頭のようです。

「新鮮な空気」は必要ですが、「隙間風」は嫌われます。夏であっても、開けた窓から入る風に当たると、風邪をひいたり、体調を崩す原因になると考えられ、窓を開けると、窓際に座った人に風が当たらないかどうか気遣います。日本人は、換気する際、風が当たるかどうかには無頓着ではないでしょうか。むしろ、暑い季節には風に当たるために窓を開けるのが普通でしょう。

食生活については、海が無く、気候の寒冷なベラルーシでは、農水産物の種類も限られ、日本人の長寿を支えている海藻類や大豆などの食材が手に入りにくくなっています。その代わり、種類の豊富な乳製品や、大麦や蕎麦の実、オーツ麦などの穀類が日常的に摂取され、主要な栄養源となっているほか、夏のベリー類も日本より種類が多く、身近な存在です。また、夏の間に得られる自然の恵を保存食に加工し、ビタミン源の不足しがちな冬への貯えとします。各種のハーブ類を用いた民間療法も盛んで、外国製の各種薬剤が入手可能な現在でも、煎じた植物で諸症状の緩和を試みるよう、医療機関で勧められることも珍しくありません。風邪を撃退するハチミツ、ニンニク(+ウォッカ?)や、ロシア版サウナも人気のある健康法です。一方で、寒さを乗り切るには、カロリーの高い食べ物が良いとする考えは未だにあり、料理のコクを出すうえでも油を多用するのが、日本人には受け入れ難いところです。最近では、肥満が健康にも美容にもマイナスであることが認識されるようになってきましたが、特に中年男性・女性の太りっぷりには、日本人には真似できないものがあります。老若男女を問わず、至る所でタバコを吸うのにも閉口します。

元来ベラルーシ人と日本人では、体格も体質も異なる訳で、同じものを食べても身体の反応は異なります。ベラルーシに住んでいる以上、ベラルーシの環境に応じた生活を送る必要がある反面、自分が日本人であり、ベラルーシ人に有効な健康法が、逆に有害になる恐れもあることには留意すべきだと思っています。

(花田朋子 ミンスク在住)


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